情報BOX:中国の1兆4000億ドル規模の地方債務対策、その中身は
[11日 ロイター] - 中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は8日、経済の構造的なリスクとなっている地方政府の「隠れ債務」に対応し、低迷する経済を上向かせることを目指して10兆元(1兆4000億ドル)規模の対策を決定した。 計画の主な内容は以下の通り。 <対策> 中国当局は、地方政府が特別債の起債を通じて調達できる負債額を今後3年間で6兆元(8360億ドル)増加させた。これにより、特別債の発行枠は35兆5200億元となり、全体の債務上限は52兆7900億元となる。財政省のデータによると、2023年末時点の中国の地方政府の債務残高は40兆7400億元だった。 新たに調達する資金は、売れ残り住宅の在庫減と満期を迎える地方融資平台(LGFV)を通じて蓄積された債務の返済に充てられる。LGFVは地方政府が公式の債務上限を回避するために使われていたため、中国当局は「隠れた負債」と呼んでいる。 地方政府は今後5年間、中国当局が承認した起債によって年間8000億元を債券の償還、「隠れた負債」と呼ばれるLGFV債務や融資の返済に充てることが可能になる。 中国当局は無謀な借り入れに責任のある地方公務員に対する調査が実施され、責任を問われるとの見通しを表明。債務管理の改善に向けてLGFVの改革を加速させるとも表明した。 <影響> 高水準の負債と歳入の減少に直面している地方政府は公務員給与を削減し、請負業者への支払いを遅らせている。 2021年以降の深刻な不動産危機に端を発したひずみは、市や省の重要な収入源となっている不動産開発業者への宅地競売の収入を壊滅させた。これは中国が24年に目指す5%の経済成長目標を危うくしてきた。 当局者の試算によると、「隠れ債務」を公的債務に交換するプログラムによって地方政府は5年間で6000億元の利息を節約できる。元本返済に充てることができる資金により、地方政府の経費削減圧力も緩和される。 財政省は、23年末時点の「隠れ債務」は14兆3000億元だったと推計している。当局は28年までに2兆3000億元まで圧縮する計画だ。 これに対し、国際通貨基金(IMF)はLGFVの債務が23年末時点で60兆元に上り、国内総生産(GDP)の47.6%を占めると推計している。 <本当の刺激策は?> 債務交換プログラムは実体経済への資金の流れを改善させる一方で、中国が過去に景気減速や市場混乱の際に実施した財政パッケージとは一線を画す。 過去の景気刺激策が債務を急増させる原因になったことが背景にある。 それでも藍仏安財政相は8日、さらなる支援を実施すると表明した。 当局は追加対策として、売れ残り住宅の膨大な在庫を減らし、不動産開発業者から遊休地を買い戻し、大手国営銀行の資本を増強し、工場の設備更新や消費者の古い家電製品などの買い替えに対する補助金制度を拡充することを計画している。 藍氏は、これらの対策の規模や実施時期についての詳細を明らかにしなかった。 <次の動きは?> 今年の重要な会議がヒントを与えてくれるかもしれない。 今月下旬には中国共産党の最高意思決定機関である政治局会議、12月には25年の経済政策を決める中央経済工作会議がそれぞれ開催される。 来年1月に米大統領に復帰するドナルド・トランプ前大統領は中国からの輸入品に60%の関税をかけると脅しており、中国の経済成長への逆風が強まりそうだ。