夏川結衣、等身大の主婦役が人気 「まさかフラメンコまで踊るなんて」
平田周造(橋爪功)と富子(吉行和子)の夫婦、その長女・金井成子(中嶋朋子)と夫・泰蔵(林家正蔵)、周造の次男・庄太(妻夫木聡)と妻・憲子(蒼井優)、そして夫で周造の長男・幸之助(西村まさ彦)と二人の男の子。史枝(夏川結衣)は、この仲睦まじくも家族ゆえの問題を抱える大所帯を、長男の嫁として切り盛りする。『家族はつらいよ2』公開の際、実はファンが多いのは、“史枝”だと聞いた。個性的な家族の中で、激しくアピールせずとも要となっている史枝の在り方に、共感する人が多いのだろう。それを受けてか、シリーズ3作目となる『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』で、史枝は物語の中心となっていた。 山田洋次監督は、本作をどういう作品に仕上げたいと思ったのか? 本作を、今回は夏川結衣さんに、史枝という役について、『家族はつらいよ』シリーズについて、そして共演者や山田監督についてうかがった。
夏川結衣(以下、夏川):山田監督は、以前、いつかは主婦の話を撮りたいとおっしゃっていました。たぶん、家族の話を撮られる中で、“主婦”という存在に興味を持たれたのだと思います。それを『家族はつらいよ』に当てはめ、前に出ることはありませんが、家族全員のことを把握している“史枝”がいなかったら、家族はどうなるのか。そう考えられて、本作を作られたのだと思います。描くにあたっては、かなりリアルに主婦を観察されたように感じました。
等身大の主婦・史枝を演じる まさかフラメンコまで踊ることになるなんて!
――夏川さん演じる史枝は、どういう人物なのでしょうか? 夏川:等身大の主婦、といいますか。きれいなお母さんでも、よくできた人でもなく、ちょっとドジで、そそっかしい人。でも主婦って本当に大変だと思います。 山田監督との初めてのお仕事だった『東京家族』(2013)のときに、私、「粗忽(そこつ)な人だね」と言われたんです。特に何かしたわけではないのですが、普段の私をご覧になっていて、そう感じられたのだと思います。見抜かれたと思いました(笑)。でもそれを踏まえて、夏川ならこういう話ができるなと思っていただいたわけで、とてもありがたく思っています。 ――今回は、物語をリードする立場に加え、フラメンコを見事に踊るという見せ場まで用意されていましたね。 夏川:脚本を読んで初めて、「ちょっと待て。これは大変なことになる!」と気づきました(笑)。自分が事件を起こすことで、家族がてんやわんやになるし、まさかフラメンコまで踊ることになるなんて! フラメンコのお稽古は、クランクインの1カ月前から始めました。