【MotoGP】転倒続出ドイツGP、要因は特異なレイアウトとタイヤ・気温。「すぐフロントタイヤの温度が下がってしまう」
MotoGPドイツGPの初日は、転倒するライダーが続出した。この背景には、サーキットレイアウトと供給されるタイヤ、そして今年の天候が関係している。 【動画】マルク・マルケス、得意のザクセンリンク初日にハイサイドで大クラッシュ 特に転倒者が多かったのはプラクティスだった。この1時間のセッションで合計10人のライダーが転倒している。 転倒が多かったのは、ターン1とターン11だ。ターン1ではファビオ・ディ・ジャンアントニオ(VR46)が転倒でバリアを破損させ、赤旗の原因にもなった。中上貴晶(LCRホンダ)、ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ)、ペドロ・アコスタ(GASGAS)もここで転倒している。 またターン11ではマルク・マルケス(グレシーニ)がビッグハイサイドを喫し、左手指を骨折。マルコ・ベッツェッキ(VR46)、エネア・バスティアニーニ(ドゥカティ)らもターン11で転倒と、このふたつのコーナーで多くの転倒が発生した。 幸運にも大きな怪我には発展しなかったが、なぜこうした転倒が多発したのか? そこにはザクセンリンクの特徴的なコースレイアウトが関わっている。 ザクセンリンクは左回りのコースレイアウトが特徴となっていて、カレンダーの中では異例と呼べる存在だ。13個のコーナーで構成されるレイアウトは、そのうち10個が左コーナーという偏り具合となっている。 そのため、タイヤを供給するミシュランは左右非対称のタイヤを用意。数少ない右コーナーのために、右側を素早くウォームアップできるようにしている。 しかしだからといって全く問題がないわけではない。タイヤのスペックの決定はシーズン前に行なわれるため、実際の気象・天候条件を考慮できないのだ。 通常、7月のドイツGPは蒸し暑いコンディションで行なわれる。しかし今年は例外的に涼しいコンディションになっており、初日は最高気温18度という気象条件で行なわれた。 そのようなコンディションでは、ザクセンリンクで3つ中2つ目の右コーナーであるターン3からターン11までの約30秒間の間に、タイヤの右側は冷えてしまう。ターン11から次の右コーナーであるターン1へかけても同様だ。それがリスクとなり、今年のように風も強い場合、問題はさらに悪化してしまう。 「プッシュしようとしても、ラップ中ずっとフロントタイヤの温度がすぐに下がってしまって、難しかった」 そう語るのはプラクティスでトップタイムを記録したマーベリック・ビニャーレス(アプリリア)だ。 「だから大変だったよ。常に片目で(ダッシュボードを)見て、『OK、この温度なら大丈夫。もっと速くいける』といった感じだった。幸運なことに温度センサーがあるから確認できるんだ。それで少し安全に走るようにしていた。温度が下がればすぐに注意するようにね」 プラクティスで5番手となったフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ)も、レイアウトと今年のコンディションが転倒に影響していると認めている。ただそれだけではなく今年のミシュランタイヤの“高すぎる”リヤグリップが要因になっているとも指摘した。 「新しいタイヤは、本当にリヤグリップが高くなっている。それによってフロントが押されてしまっていると思う」 「以前から危ない状況だったけど、タイヤが改善された今はもっと悪くなっていると思う」 「チェックしてみると、あそこでクラッシュしたみんなは(アタックの)1周目だった。最初出て行くときは過剰にプッシュできないし、その次のアタック時にも温度が少し下がっている。だからかなり注意しなくちゃいけない。そして、クラッシュした3人は最初のアタックでの転倒だった」
Lewis Duncan