「103万円の壁」見えない妥協点…与党内に消極的空気、経済対策案に盛り込まれず国民「全然だめだ」
自民、公明両党は14日、政府の総合経済対策について政調会長への一任を取り付けて党内手続きにめどをつけたが、今後始まる国民民主党との協議は落とし所が見えていないのが実情だ。国民民主が最重視する「103万円の壁」見直しには政府・与党内で消極的な空気が強く、協議を前にして国民民主側が不快感を示す事態となっている。 【一覧表】総合経済対策の主な項目
■見直しに触れず
自民の小野寺政調会長は同日の政調全体会議で、経済対策について「さらにブラッシュアップし、良いものにしていきたい」と述べ、国民民主を含む他党との調整に意欲を示した。
経済対策は、低所得世帯への給付金や電気・ガス代支援、人工知能(AI)や半導体分野への投資などが柱だ。文案調整の過程では、最終盤に「家計を温め、生活者が豊かさを実感できるよう、幅広い方策を検討する」との一文が追加され、「手取り増」を訴える国民民主に配慮したが、「103万円の壁」の見直しには触れなかった。
国民民主の玉木代表は、経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案の成立に協力する前提として、「103万円の壁」の見直し実現に向けて方向性を示すことを求めており、同党幹部は現段階の経済対策に「全然だめだ」と漏らす。
■「指導力発揮を」
経済対策に「103万円の壁」の見直しが盛り込まれなかったのは、今後の協議に備えて柔軟に構える狙いがある一方、政府・与党の消極的な雰囲気が影響したと見る向きもある。
国民民主の要求通りにすれば、国・地方を合わせて最大7兆~8兆円程度の税収減が見込まれることから、自民の閣僚経験者は「財政が破綻してしまう」と懸念する。財務省のほか自治体業務を所管する総務省内でも否定的な意見が強く、「103万円の壁」見直しに向けた具体的な動きは出ていない。自治体側でも「地方の財源に大きな穴が開くことはあってはならない」(全国知事会長の村井嘉浩・宮城県知事)と警戒感が広がっている。
こうした状況に、玉木氏は13日のテレビ番組で「総務省が各自治体の首長に工作をやっている。やめてもらいたい」とかみつくなど、反発を強めている。与党は、自公国3党の税制調査会長の協議での歩み寄りを期待するが、国民民主が政府・与党への反感から強硬姿勢を貫けば、協議が難航するのは必至だ。