米紙「日本の野球ファンは大谷が大好きだが、“ヤンキースへの愛”も相当だ」─洗練された日本のファンの「チームへの忠誠心」がすごい
例年以上に注目度の高い今年のワールドシリーズ。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が目をつけたのは、大谷のいるドジャースが相手であるにもかかわらず、ヤンキースを応援する日本人ファンが多いことだった──。 【動画】2009年のワールドシリーズで2ランホームランを放つ松井秀喜
「大谷は大好きだけど、ヤンキースに勝ってほしい」
カワイ・マサは先日、ニュージャージー州エッジウォーターにある自身が経営する日本風ドーナツ店で、色あせたニューヨーク・ヤンキースの帽子をかぶって接客をしていた。 それはヤンキースとロサンゼルス・ドジャースが対戦するワールドシリーズ第1戦の2日前のことだった。20年前に日本から移住してきたカワイのヤンキースへの忠誠心は、揺るぎないものだ。 日本の比類なき強打者、大谷翔平がワールドシリーズに進出するのを、彼は嬉しく思っている。しかしだからといって、カワイと彼の店の日本人従業員たちは、これまでと同様にヤンキースを応援するつもりでいる。 「いやいや、(ヤンキースを応援しないなんて)ありえません」とカワイは笑って言う。「私は大谷が大好きです。彼は素晴らしい選手で、私と同じ日本人です。でも、ヤンキースに勝ってほしいんです」
「ヤンキース人気」を高めたのは…
日本の野球ファンは世界中のスポーツファンと大きく変わらない。特定のチームを熱心に応援する人もいれば、もっとカジュアルに、成績に応じて応援するチームを変える人や、特定の選手だけを応援する人もいる。 ただし、大谷は特殊なケースだ。かつてはベーブ・ルースを誰かと比較するのは不敬だと考えられていたが、大谷は彼ですらできなかったことを成し遂げた。ベーブ・ルースはボストン・レッドソックスで投手として活躍し、その後ヤンキースの伝説的なスラッガーとなったが、大谷のように投打の才能を同時に発揮することはほぼなかった。 大谷はオールラウンドなスキルに加え、謙虚さとルックスまでも兼ね備えており、多くの人々の想像力を掻き立ててきた。彼がいつか史上最高のオールラウンドプレーヤーとみなされる日が来ると考えるのは、おかしなことではない。 しかし、日本の熱心なヤンキースファンたちが、このエースの登場によって、ヤンキースへの忠誠心を失うことを期待してはならない。たしかに、彼らは大谷が好きであり、尊敬もしてもいる。しかし、彼らはヤンキースを愛しているのだ。考えられる最高の結果は、大谷が1試合で4本塁打を放ち、ヤンキースが5対4で勝つことだろう。 「たしかに、そうなったら完璧ですね」と話すのは、松井秀喜が主宰するNPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」のエグゼクティブディレクターであり、ニューヨークを拠点とするスポーツエージェンシー、リードオフ・スポーツの社長でもある白井孝明だ。 「ドジャースは日本のファンにとってより大きな存在となりつつあります。でも、ヤンキースはヤンキースのままなんです」 松井がヤンキースに入団した2003年以来、白井はニューヨークに住んでいる。野球好きな日本において、ヤンキースは以前から人気があったが、松井がチームに加わり、2009年にはワールドシリーズに進出、MVPに輝きチームを優勝に導いたことで、日本におけるヤンキース人気は確固たるものとなった。 「2009年以降、すべてが変わりました」と白井は言う。「秀喜はヤンキースで本当に良い成績を収めました。そのつながりは非常に強いものです」