マー君はなぜ勝てないのか?その不可解な不調原因を探ると
自己ワーストとなる5連敗中のヤンキースの田中将大は、当初、10日のオリオールズ戦に先発予定だったが、先発が1日ずれ、現地時間11日のエンゼルス戦に変更された。オリオールズには先月26日の先発で9安打、7失点と打ち込まれており、それが理由とされる。ジョー・ジラルディ監督も、「何度も対戦しているから」と否定しなかった。 弱気とも映るが、それだけ田中の復調に疑問を持ち、どう軌道修正すればいいのか手を焼いている、ということなのか。 そのことは、分からないでもない。今回の田中の不振は、 極めて不可解である。 今季から、STATCASTという複雑な投球解析が可能なトラックマンを応用したシステムが本格運用されている。それ以前にもPITCH F/Xというシステムがあり、 回転数やリリースポイント、ボールの動きといった数値を出すことは可能だったが、野手の動きも含めて、 より総合的な分析が可能となった。その数値をたどると、本人の感覚では分からない部分で、リリースポイントのズレなどから投球フォームの問題点をあぶり出したり、故障があるとすればそれが数値にも現れる可能性があるわけだが、では、そこに田中の不振の原因が透けているかといえば、ひょっとしたら、という程度のものばかりだった。 いくつか、紹介したい。 まず、昨年後半の3ヶ月、今年4月27日のレッドソックス戦で完封した試合を良い例として抜き出し、2回途中、8失点でノックアウトされた5月14日のアストロズ戦、4回に1死も取れずに6失点でマウンドを降りた20日のレイズ戦、6回途中、9安打、7失点で降板したオリオールズ戦、5回を投げて5安打、5失点だった6月6日のレッドソックス戦を悪い例として、 球速を比較してみる。 体に何か問題があれば、球速が落ちている可能性があるわけだが、表1を見ると、昨年よりも主要球種はむしろ速くなっている。また、 良い時も悪い時も似通っており、6月6日の4シームがやや遅いが 、極端な差ともいえない。強いて気になるとすれば、 スプリット以外の球種がリーグ平均に近く、打者にしてみれば、 一番見慣れた球であることだが、それも去年と同様だ。