トランプ関税で生鮮品が高騰や品薄に、メキシコ・カナダ産農産物供給細る恐れ
Leah Douglas Ed White [ワシントン/レジャイナ(カナダ・サスカチュワン州) 26日 ロイター] - トランプ次期米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に高い関税を課す計画を実行すれば、米国内ではアボカドやイチゴを含めたさまざまな生鮮品の価格が跳ね上がったり、品薄になったりする恐れが出てくる。農業経済の専門家や業界幹部らは、こう警告した。 米農務省と税関のデータによると、米国の輸入農産物に占めるメキシコとカナダのシェアは圧倒的に大きく、昨年の輸入総額は860億ドル近くに上った。 これらの農産物に関税が適用されれば、米国向けの供給に影響を及ぼし、米国民が食料の輸入先として近隣2カ国をいかに頼りにしているかが浮き彫りになるだろう、と複数の専門家は指摘する。 米国生鮮青果物協会のランス・ユングマイヤー会長は26日、国内の消費者は食料品店や飲食店において品切れという形で関税のインパクトを実感することになると説明。「全体的に農産物は種類が減る。飲食店は果物と野菜の数や割合を減らしたメニューに変更せざるを得なくなる」と述べた。 米農務省のデータからは、米国が輸入する野菜のおよそ3分の2、果物とナッツ類の半分がメキシコ産で、アボカドの比率は90%弱、オレンジジュースは35%、イチゴは20%にもなる。 アボカドは消費者がサラダやサンドウィッチなどに入れる傾向が強まった2019年以降、米国への輸入量が48%も増加。メキシコ産アボカド輸出のおよそ8割が米国向けで、昨年の総額は30億ドルだった。 メキシコの主要なアボカド産地であるミチョアカン州のラミレス知事は、関税がコスト増大と価格上昇という形で直接消費者に打撃を与えると強調する。 米国スピリッツ協会(DISCUS)のデータに基づくと、カクテルに利用されるテキーラとメスカルといったメキシコ産蒸留酒の米国への輸入額も19年以降で160%増えており、関税が直撃しそうだ。 DISCUSは「米国の接客サービス業界がコロナ禍からの長い回復軌道を歩み続けているところで、南北2つの隣国からの輸入蒸留酒に関税を課せば、米国の消費者に痛みを与えることになる」と訴えた。 <信頼低下も> トランプ氏の関税は、毎年100万頭余りに上るメキシコからの肉牛輸入にもブレーキをかけかねない。 ただ米国の畜産業界は、関税で輸入される肉牛が減少すれば業界にとってプラスだと歓迎。米国の消費者にとって牛肉価格がさらに上昇する可能性はあるが、業界からはある程度のコスト増は吸収できるかもしれないとの声も聞かれた。 米農務省の最新見通しからは、来年の米国の農産物貿易が420億ドル強の赤字になる公算が大きいと分かる。旬ではない農産物への需要や、メキシコからのアルコール類の輸入の高まりが一因と見られる。 ホーランド・アンド・ナイトのシニア政策アドバイザー、ピーター・タボー氏は、関税の脅しは2026年に見直しが予定される米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を巡る交渉を有利に運ぶ手段にされている可能性があるとの見方を示した。 しかしタボー氏は、高関税の適用で米国は信頼できない貿易相手と目され、米国製品の輸入業者がどこかで損失を取り返そうとする動きが生じかねないと心配している。