AIは労働・資本市場に新たな勝者と敗者生む-ECBチポローネ理事
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)のチポローネ理事は4日、人工知能(AI)は中央銀行にとって有用である一方、利用状況の監視や適切な監督が必要だとの考えを示した。
チポローネ氏はローマで行われたイベントでのスピーチで、「AIは、経済分析からコミュニケーションに至るまで、イノベーションと効率化の機会を提供する。だが、考慮すべきリスクもあり、われわれは適切な安全対策をきちんと構築している」と述べた。
世界経済に大変革をもたらす可能性があるとして、AIは金融政策担当者の関心を集めている。中銀関係者は、経済状況の判断に使われる広範なデータセットを迅速に分析できるAIの能力にも関心を持っている。
チポローネ氏は「AIをわれわれのプロセスに組み込むにあたっても、人間の判断と批判的思考を最前線にしておかなくてはならない」と強調。「このバランスは、中央銀行のデータ、意思決定、より広範な金融システムに対する信頼を維持するために不可欠だ」とした。
チポローネ氏はこのほか、AIが労働力不足の解消や生産性の向上に寄与する一方、計算能力維持のためのエネルギーコストを押し上げる可能性があると指摘した。また、AIが人々の消費性向や信用へのアクセスに影響を与えることで、金融政策に対する需要の反応も変えることになり「労働市場と資本市場に新たな勝者と敗者を生み出し、所得と富の分配に影響を与えるだろう」との見方を示した。
原題:ECB’s Cipollone Says AI Can Help Central Banks, Needs Safeguards(抜粋)
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Jana Randow