日本の対外投資、国内環流に向けじわり胎動-インド経済上回る630兆円
(ブルームバーグ): 日本の投資家は、過去数十年にわたって持ち続けた海外資産に対する投資意欲を失い始めている。
日本の対外投資は4兆4000億ドル(約630兆円)に達しており、インド経済をも上回る巨額の資金が巻き戻されれば、そのスピードと規模は世界の市場を揺り動かす力を持つ。日本とその他の国・地域との間では金利差が縮小してきているが、これまでのところ、資金流入は一部の投資家が懸念していたほど急激ではなく、漸進的なペースにとどまっている。
ティー・ロウ・プライスの債券部門責任者アリフ・フセイン氏は、「海外から日本への資金還流は息が長く、緩やかなペースではあるが、圧倒的な規模になるだろう」と指摘。30年近い投資経験を持つ同氏は、「これはメガトレンドの一つになり、今後5年から10年のスーパーサイクルになり得る」とみる。
今年に入って8月までに国内投資家が買い越した日本国債は28兆円と、同期間としては少なくとも過去14年間で最大の規模に達した。一方、外国債券の買いは7兆7000億円と、ほぼ半減。外国株式の買いは1兆円未満にとどまった。
日本の対外投資動向は、国内の超低金利を利用して調達した資金を海外資産への投資に充てる巨大なキャリートレードと比較されてきた。
資金フローの規模は今後、国内金利変動のペースと軌道に左右されるだろう。日本銀行の植田和男総裁は、当局がより慎重に利上げを進める姿勢を示唆。一方、ストラテジストの間では、金融政策の正常化が不可避との見方を背景に、来年にかけて円が強含むとの見通しでほぼ一致している。
日銀が利上げに踏み切ったことを受けて、新発30年債利回りは年初から約40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して2%台で推移。国内最大の生命保険会社の一部が国内債積み増しの目線としている水準に近づきつつある。
T&Dアセットマネジメントは、30年債利回りが2.5%を超えると、国内への資金回帰につながり得ると指摘していた。第一生命保険は4月に、30年債利回りが2%以上であれば、比較的魅力的な水準になるとの見解を示した。