住宅、自動車、ボーナス…年末は庶民の景況感が透けて見える(中西文行)
【経済ニュースの核心】 「103万円の壁」などを考慮して、15~24歳のパート・アルバイト約60万人が年収50万~149万円で就業調整をしているという。ただ、法曹や会計士などを目指すような学生は受験勉強に追われ、理系学生も実験やリポート提出に大忙しでアルバイトをせず、大学生活を送る。実は、これらの学生が大手企業の求める即戦力、将来の幹部候補生だ。 【写真】カレーライス物価「370円」超えに庶民は悲鳴 大手電機メーカーは、横並びで同額支給の初任給見直しを始めた。職務内容に沿って処遇する「ジョブ型人事」を新卒にも広げ、優秀な人材の採用や抜擢につなげる。特にIT人材の獲得競争は激化している。システム開発企業では2025年4月入社の新入社員から、必要な能力などを明確にした職務記述書を入社前に提示、IT系資格を持つ新卒の給料を引き上げる。世界を席巻する米IT企業並みに、初任給から格差をつけ、即戦力の人材確保である。 経営学的に企業の社員は「3分の1は必要な人、3分の1は居ても居なくてもいい人、3分の1は居ないほうがいい人」で構成されている。 旧ツイッター(X)を買収したイーロン・マスク氏は、従業員を短期間にほぼ半減させ、ぜい肉を切り落とし競争力を強化した。「優秀な社員だけ残ればいい」ではないが、極論すれば、将来の景気減速に備え、少数精鋭、一騎当千の人材だけの人事戦略である。 ■給与格差は拡大するか 日本の「競争社会」も給与格差が入社時から強化される。ましてや、日銀が利上げ見送り、「悪い物価上昇」で景気減速を警戒となれば、この給与格差は全社員に拡大される。誰かの給与を上げれば、誰かを下げて、競争を促進。同時に総人件費も抑制である。 さて、足元の景気はどうか。 個人消費の2大要素、住宅と自動車。24年10月の新設住宅着工戸数は6万9669戸(前年同月比2.9%減)と6カ月連続で減少した。11月の新車登録台数と軽自動車の販売台数合計は38万9529台(同5.2%減)と3カ月ぶりにマイナスとなり、景気減速を示している。 一方、12月に支給される民間企業(事業規模5人以上)の24年冬のボーナスは1人当たり40万5573円(前年比2.5%増)、4年連続の増加と予想されている。 「103万円」など「金」の話題が跋扈の師走。住宅、自動車、ボーナスなどから庶民の「景況感」が透けて見え、この年末は25年新春経済の試金石である。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)