定岡正二・篠塚和典・川口和久の深掘りトーク! お題「投手と打者から見た投球術」【昭和ドロップ】
投球術特集に合わせ、久しぶりに『昭和ドロップ!』開催。某月某日、都内のいつもの料理店で13時集合としたが、ジャイアンツ時間が体に染みついて(?)、絶対、遅刻しないはずのサダさんが姿を現わさなかった。一体何があったのか……。(ちなみにシノさんの言葉の締めは“変えるのはない”です。詳しくは本文を) 構成=井口英規 川口 サダさん、珍しく遅いな。忘れているのかな……。一応、LINEしておこう。……あ、既読ついた。 篠塚 先に料理だけ頼んでおこうよ。サダさんは、いつもと同じのでいいんでしょ。あ、電話、来たよ……はい、あ、そうですか、分かりました。で、サダさん、すき焼き定食十六穀米でいいですよね? はい、了解で~す。 川口 何て言い訳してました? 篠塚 時間を間違えたって。サダさんの家からなら車で15分か20分くらいかな。待っていても仕方ないから始めようか。きょうのテーマは何だっけ? ──投球術です。投手目線、打者目線での話をしてもらえたら。 川口 いつもよりマジメバージョンが良さそうだね。シノさん、現役時代、得意だったピッチャーは誰ですか。 篠塚 中日なら三沢(三沢淳)さん、小松(小松辰雄)、ヤクルトなら尾花(尾花高夫)。大洋だと遠藤(遠藤一彦)さんも最初は抑えられたけど、嫌じゃなかった。 川口 みんな右ですね。 篠塚 右はそんなに嫌だと思ったピッチャーはいない。特にアンダースローの三沢さんは、調子が悪いときに当たっても打てちゃう人だった。向こうは顔を見るのも嫌だったんじゃないの(笑)。広島の池谷(池谷公二郎)さんは少し苦手だったな。グラブを突き上げてフォームが大きかったでしょ。タイミングが合わなかった。 川口 北別府(北別府学)さんはどうでしたか。 篠塚 うまかったんだよね。コントロールもよかったし。 ──裏をかかれたりもあったんですか。 篠塚 裏をかかれたり、とは違うな。だいたい俺は真っすぐしか待ってなかったからね。(カープの捕手の)達川(達川光男)さんも、それが分かっていて初球は変化球しか投げてこなかった。北別府は外スラ(バックドア)をけっこう使ってきたけど、初球からあんなところバッターは狙わないよね。 川口 配球のつながりというか、これが来たから次はこれだとか予測しながらやっていたんですか。 篠塚 それはあまりない。追い込まれるまでは、真ん中からインサイド寄りの真っすぐしか狙ってなかった。そこに真っすぐが来ればいくし、変化球でも打てると思えばいく。配球を読んで外を狙うとかはなかったね。 ──インコース真っすぐを待つのは、準備しないと振り遅れるという意識からですか。 篠塚 一番強く振れるんだ。別にインコースは苦手じゃなかったしね。もちろん、2ストライクを取られたあとは、どこでも手を出さなきゃいけない。外の低めを拾うようなバッティングは、たいてい2ストライクからだよ。 ──投手・川口は、打者・篠塚との対戦で、どんなところに注意しましたか。 川口 左バッターって、打率の高いシノさん、高木豊さん(大洋ほか)、長打のあるクロマティ(巨人)、バース、掛布雅之さん(ともに阪神)みたいにタイプが2つあったけど、どちら相手でもインハイ、アウトローが基本。左に打たれる左ピッチャーは、大抵インハイが投げられないんだ。(打者に)当てるリスクはあるよ。俺もシノさんには何回か当てたし(笑)。でも、やっぱりインハイを使えないとアウトコースを広く使えないんだよね。アウトコースだけだと踏み込まれちゃうから、捨て球じゃないけど、インハイは絶対必要。外から入ってインコースを見せて、また外、インコースでファウルさせてカウントを稼いで外とか、そこは徹底していたね。 篠塚 腕を下げたスライダーピッチャーは外一辺倒のときもあるけど、左の本格派はインハイ、アウトローはベースだね。体に近いインハイはやはり嫌だったけど、そういう攻めだと予測しているからデッドボールは少なかった。 川口 でも、左投手が左打者のインコースにきっちり投げるのは結構、難しいんですよ。真ん中方向への角度がつくんで、シュート回転をさせるような意識じゃないと、いいところには決まらない。僕は頭を後ろに残したまま手だけ前に出すような感覚で投げていました。左投手にとって、左打者のインハイと右打者のアウトローは磨かなきゃ身につかない技術だと思います。 ──インローではなく、インハイ。 川口 そう。対左はインコースでもインハイ。インローは・・・
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週刊ベースボール