娘の進路を狭めるのは親の偏見!? 「女の子は数学が苦手」は本当か #性のギモン
求められる企業や大学のトップからの改革
2022年4月に工学部を開設した奈良女子大は今春で3年目を迎え、就活を意識する学生も少なくない。 学部長の藤田盟児さんに、国内の女子大史上初の工学部を設置した背景を振り返ってもらいつつ、「学生たちの大学卒業後の進路選択」について思いを聞いた。
「奈良女子大が工学部を設置した最大の理由は、男女共学の環境で女子学生がマイノリティーであることで受ける負の影響を小さくするためです。マイノリティーな存在であることが、当人の能力の伸び方や人生設計に影響を与えます。たとえば、共学の工学部の女子学生の約3割が、大学時代に男性優位の環境で苦労した経験から工学系の就職先を選ばないといったことがあります。マイノリティーであることから自らの夢を失ったり興味関心の幅を狭めたりしてしまわないために、強い自己を確立することが大切という考えを持っています」 奈良女子大では、女性のエンジニアがマンツーマンでコーチングをしてくれるなど、社会で活躍する理系女性から進学や就職に関するアドバイスをもらいながら自己プロデュースをしていくプログラムが設置されている。 奈良女子大に赴任したとき、「女子大の学生の大学院進学率の低さに驚いた」という藤田さん。実際、国立大の理工系学部の大学院進学率は全体が6割の中で、女子に関しては2割に届かない。学部開設から3年目を迎えた今、工学という分野を突き詰め、リーダーを担う人材がひとりでも増えてほしいという願いを抱く。 「『女の子は大学院まで行って学ばなくていい』という価値観を持っている親が多いことから、女子学生の多くは親に気を使って院へ進学したいと言わないんです。今はどの企業も女性エンジニアを採用したがっているので就職を促す圧力も強いですが、女性社員ではなく女性の役員を増やさないといけないと理解している企業は修士号や博士号を取得するまでしっかりと待ってくれます。学部としては、親や社会の圧力に負けず、社会でリーダーとして活躍できる人材育成に今後も注力しなければいけないという思いです」