ヨーロッパ企画の“新たな可能性”を詰め込んだ再演『来てけつかるべき新世界』上田誠、藤谷理子、岡田義徳インタビュー
2016年に初演され、上田誠が第61回岸田國士戯曲賞を受賞した“SF人情喜劇”『来てけつかるべき新世界』の再演が決定。今回は新たに岡田義徳、板尾創路といった実力派俳優陣を加えて、2024年8月31日に滋賀・栗東芸術文化会館さきら 中ホールにて幕を開ける。 この度、ヨーロッパ企画の舞台に初参加となる岡田、主人公・マナツ役の藤谷理子、そして脚本・演出を手掛ける上田誠にインタビュー。再演にかける意気込みなどを語ってもらった。
■ヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」
――岡田さんは、ヨーロッパ企画の舞台に初出演。オファーを受けての心境を聞かせてください。 岡田:舞台でお話を頂いたのは初めてなのですが、30代の頃に出演したドラマ『ユキポンのお仕事』の脚本を上田さんが書かれていて、それからのお付き合いになります。実は、また上田さんとご一緒させてもらいたいと思っていたんですよ。『ユキポンのお仕事』の脚本が本当に面白かったのと、昨年出演したアドリブドラマ『横道ドラゴン』(※上田が脚本で参加)でもお話させていただいて。その時に、次は舞台で! と思っていたので、呼んでもらえて本当に光栄です。 ――そして藤谷さんは、前回の『来てけつかるべき新世界』がヨーロッパ企画の本公演に初めて出演した作品なんですよね。 藤谷:そうなんです。初めての大きな舞台、そしてツアーで各地を回るというのも初めてだったので、私にとってかけがえのない大切な作品でした。それが再演する、さらにまた同じ役を演じられるなんて! 本当に嬉しいです。以前よりも成長した姿を見せなければと思いました。
――上田さんは、なぜ8年経った今、再演しようと? 上田:基本的には新作をやりたいのですが、再演してでもちゃんと育てた方が良い作品もあるんです。それがこの『来てけつかるべき新世界』でした。もちろん初演にしかない良さ、トキメキはありつつも、今作は重ねれば重ねるほど熟成する良さがある作品だと思っていて。実は、初演を勢いで作ってしまったこともあって、かなり初期から「再演しよう」という気持ちがありました。それが今、落ち着いて取り組めるタイミングが来たので、キャストの入れ替えなんかもして、ちょっとずつ改良しながらより良い形にしていこうとしているところです。 ――ドローンやAI、メタバースなど、2016年に比べると今の方がリアルに感じられる内容かもしれませんね。 上田:確かに。初演の時はファンタジーとして見られたものが、今はリアリティを持ったものとして受け止められやすいかもしれませんね。「本当に野良ロボットが電気を盗みに来るかも!?」など、身近に感じられる未来の物語になるかもしれません。 ――岡田さんは初演の方をご覧になったとのことですが、物語の世界観に関してどう思われましたか? 岡田:物語よりも、エチュードで演じる役柄が変わっていくと聞いて衝撃を受けました。エチュードに苦手意識があるので……というか、あまり経験がないんです。そこを楽しめるようにならなければストーリーに集中できないと思うし、僕自身もエチュードを通じて新しい可能性を見つけていけたらと思っています。 上田:『横道ドラゴン』でのアドリブを見ると、苦手には感じなかったですけどね? 岡田:本当ですか? あの時は、劇団ひとりさんとの掛け合いが楽しすぎたんですよね(笑)。あの時の楽しさを、今回のエチュードでも感じられるようにしたいです。 ――劇中ではコテコテの関西弁を使うことになりますが、そちらの不安などはないですか? 岡田:先日まで出演していた作品で演じていた役が関西弁だったのと、そこで今作の演出助手を務めている山田翠さんとご一緒していて「次はヨーロッパ企画でやるんですからね!」と厳しい指導を受けていたので、方言に関しては不安はないです。不安なのは、エチュードだけ(笑) 藤谷:普段使っていない言葉でエチュードしなきゃいけないのはかなり大変ですよね。 岡田:でも、ヨーロッパ企画は本番でのアドリブがほとんどないと聞きました。私が出演している『THE3名様』シリーズのドラマもアドリブをほとんどなくして、いかに台本を面白く言えるかということにずっとチャレンジし続けてきたんです。きっとそれと共通する部分があるだろうなと感じていて、不安ではありますが、楽しみでもあるんですよね。 ――岡田さんは他作品などではアドリブを入れたりするのですか? 岡田:20代の頃はそうでした。でも歳を重ねるにつれて、脚本通りにやることが脚本家への礼儀だと思い始めました。脚本家が面白いと思ったものを詰め込んでいるんだから、それをしっかり表現できてこその役者だな、と。若い頃は「(アドリブを)かましてやろう」みたいな気持ちがありましたが、今では脚本にあるものを手堅く演じることが大事だと思っています。 藤谷:わかります。ヨーロッパ企画のみんなも楽屋でずっと台本を読んでいます。 上田:今さら発声の大事さを語ってたりね(笑)。 藤谷:発声のレッスンに通い始めた方もいますよ。 岡田:今ですか!? 上田:そう、20年前にちゃんとやっておいたら良かったのに(笑) 岡田:面白いな~! 稽古が始まったら、みなさんとこうやって芝居の話がたくさんしたいですね。