北陸新幹線小浜ルート、山岳トンネル区間の土で「基準値オーバー」割合判明 流出防止は可能なのか
北陸新幹線小浜ルートの工事を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構(本社・横浜市)が、福井県-京都府の山岳トンネル約80キロ区間の工事で出る発生土(残土)のうち約30%について、含有・溶出する重金属が基準値を超える「対策土」になると推定していることが分かった。対策土は、工事中に流出や飛散がないようにする必要があり、受入地で管理する際も重金属が移動しないよう求められる。専門家は適切な管理や住民不安の解消が課題と指摘する。 【写真】北陸新幹線のルートが想定される京都府南丹市美山にある「かやぶきの里」
小浜ルートは、福井県敦賀市から同県小浜市、京都市を経て新大阪へ至る。対策土が約30%になると見込まれているのは、福井県から南丹市や右京区京北周辺などを貫く山岳トンネル区間。 同機構によると、例えばヒ素の場合、1リットル中0・01ミリグラムを超える溶出量、または、1キログラム中150ミリグラムを超える含有量が検出された土が対策土となる。ボーリングなどを踏まえて地質縦断図を作成。重金属の含有試験も行い、約30%とはじいた。数値は変動する可能性もある。 対策土に具体的にどのような重金属が含まれるのかについて、同機構は「精査中で、回答を差し控える」としている。 畑明郎元大阪市立大学教授(環境政策論)によると、南丹市や京北は元来、ヒ素濃度が高い地質構造を持つという。空気に触れない土中にある分には問題は特段ないが、石田紀郎元京都大学教授(環境毒性学)によると、工事で土が掘り返され、ヒ素が空気に触れると酸化し水に溶けやすくなる。
同機構は、北海道新幹線の対策土の場合、受入地に二重の遮水シートや覆土などを施し、重金属が移動しない対策を取っているとする。同機構は、対策土の管理などに関し「法令などに基づき自治体と連携の上、検討を進める。工事にあたり、地元や関係者に丁寧に説明を実施する」とした。 畑元教授は「約30%は割合として多い」と指摘。適切に管理されるよう「住民、議会、自治体が監視していく必要がある」と話す。 重金属の問題に詳しい京都大学の勝見武教授(地盤環境工学)は「溶出量の基準値は、重金属が混ざった水を70年間、毎日2リットル飲んでも健康に害がない量として厳しく設定されている。基準値をわずかに超えている程度であれば、ものすごく危ないわけではない」と冷静な対応を求める一方、適切な管理と地元への十分な情報開示や説明も重要とする。 敦賀―新大阪間は年内のルート決定、来年度着工を目指している。