印刷して焼結するだけで銅配線が可能なペースト 酸化しにくく厚膜にも対応
住友金属鉱山は、「第15回 高機能素材Week」(2024年10月29~31日、幕張メッセ)内の「第4回 サステナブル マテリアル展」に出展し、開発品として「微粒銅粉」と「金属錯体導電性ペースト」を披露した。 微粒銅粉[クリックで拡大]
200℃前後で焼結し抗菌性も有す
微粒銅粉は、湿式法で製造したサイズがサブミクロン~0.4μmまでの銅紛で、200℃前後で焼結する特性を持つ。「こういった特性を持つため、微粒銅粉は半導体基板の接合材料として近年引き合いを得ている」(住友金属鉱山の説明員)。 なお、昨今はさまざまな企業によりSiC(シリコンカーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)を用いたパワー半導体の開発が加速している。こういったパワー半導体では高い放熱性が求められるため、接合材料としては高い放熱性を持つ銀ナノ粒子などが使用されている。しかし、最近は銀ナノ粒子の価格が上昇しておりコスト面で課題がある。「そこで、200℃で焼結し接合材料として機能する他、放熱性にも優れ焼結時には導電性も持ち銀ナノ粒子よりも安価な微粒銅粉に関心が寄せられている」(住友金属鉱山の説明員)。 さらに、高い耐酸化性により大気下でも容易に扱えることに加え、抗菌特性も優れるため抗ウイルス/防カビ材料としても使える。
錯体にニッケルを混ぜ、酸化を抑制
金属錯体導電性ペーストは、銅とニッケルを混合した錯体や微粒銅粉を組み合わせてペースト化したもので、スクリーン印刷により対象物に印刷し光焼成で250℃で焼結することで、銅配線を搭載できる。 住友金属鉱山の説明員は「錯体にニッケルを混ぜているのがポイントだ。光焼成により配線が形成される際に銅の周囲にニッケルが薄くコーティングされ、銅配線の酸化を抑えられる」と強調する。金属錯体導電性ペーストは厚膜での焼結に応じる。「銀ナノ粒子を用いたナノインクでも配線を行える。しかし、銀ナノ粒子を用いたナノインクは厚み方向に焼結しにくく、膜厚が制限される。つまり、電流を流せる範囲に限りがある」(住友金属鉱山の説明員)。 同社では金属錯体導電性ペーストを用いたこのプリンテッドエレクトロニクス(フルアディティブ法)で従来配線技術「サブトラクティブ工法」との置き換えを目指している。 サブトラクティブ工法は銅張積層板の全面に設けられた銅箔のうち必要のない部分を特殊な薬品で溶解除去して、必要となる銅体のパターンだけを残す製造工法だ。手順は以下の通り。まず基材に銅箔を形成する。次にエッチングレジスト塗布を行い、パターン露光を実施。続いて、レジスト除去により現像した後、エッチングで銅箔を除去する。最後にエッチングレジスト除去を行う。 住友金属鉱山の説明員は「サブトラクティブ工法は工程数が多いため、多数の機器が必要でエネルギー消費量も多い。不必要な廃液と資源も発生する。一方、金属錯体導電性ペーストを用いたフルアディティブ法は、金属錯体導電性ペーストの印刷と焼結のみで銅配線が行える。水や銅資源の消費量も少なく、必要な機器もサブトラクティブ工法よりも少ない」と利点を述べた。 会場では金属錯体導電性ペーストを用いたフルアディティブ法で銅配線を設けたポリイミドフィルムを展示した。「今後は金属錯体導電性ペーストを用いたフルアディティブ法でPETフィルムに銅配線を設置することを計画している。そのために、印刷機メーカーなどと話し合いを行い、最適な印刷方法や条件を見いだしていく」(住友金属鉱山の説明員)。 金属錯体導電性ペーストを用いたフルアディティブ法の用途としては、太陽光電池やフレキシブル大型ディスプレイ、IoT(モノのインターネット)センサー、各種電子基板への銅配線の設置を想定している。
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