EURO開催地のリアルな“今” 祭典を祝う国内…クラブとはひと味違うサッカー大国の盛り上がり【現地発コラム】
決勝トーナメント進出を決め期待感が高まり始めた
ドイツ対スコットランドは5-1でドイツが大勝した。開催国が好スタートを切ると否が応でも大会は盛り上がる。パブリックビューイングの場を離れて町中を歩いていると、そこかしこの居酒屋で祝杯を上げている姿が見受けられ、なかにはドイツとスコットランドのユニフォームが混ざり合う光景も目に入った。国・地域同士にはさまざまな関係性があるためにすべてを一括りにできないが、とりあえず両チームのファン・サポーターたちは良好な関係を築いているようだ。 ドイツ代表のグループリーグ第2戦はハンガリーとの対戦となった。週中の水曜日に開催されるゲームで、舞台はドイツ南部のシュツットガルト。今回も再びマイン川沿いのパブリックビューイングを訪れたが、18時に開始された今試合も非常に多くの観衆が詰めかけて活況を呈していた。初夏を迎えたヨーロッパ地域は日没が遅く、試合が終了する20時頃でも太陽の光が燦々と降り注ぐ。 ゲームはヤングスターのジャマル・ムシアラが先制点をマークし、33歳のキャプテン、イルカイ・ギュンドアンが2点目を決めてドイツが連勝を遂げ、グループリーグ1試合を残して早くも決勝トーナメント進出を決めた。若手とベテランが活躍する今大会のドイツ代表に、現地では期待感が高まっている。そして一時の低迷からチームを立て直したユリアン・ナーゲルスマン監督にも好意的な目が向けられ始めた。 お洒落を自称するナーゲルスマン監督はハンガリー戦の間、全身黒ずくめの服装で指揮を執っていたものの、試合後のテレビインタビューでは代表のトレーニングシャツと短パンというラフな姿で現れた。インタビュアーを務めた元ドイツ代表のバスティアン・シュバインシュタイガー氏は「その格好、クールだね」と一言。これに対しナーゲルスマン監督が「ここは暑かったからね。汗をかいたから着替えちゃったよ」と返すと、パブリックビューイングでやり取りを見ていた観衆がどっと沸いた。 パブリックビューイングの会場を離れて家路へ急ぐ。地下鉄に乗ると、余韻に浸るドイツのサッカーファンの横で、21時から始まったスコットランド対スイスの様子をスマートフォンでチェックしている人がいる。駅を降りて道を歩いていると、昼間にクロアチアと死闘を演じて2-2で引き分けたアルバニアの国旗を掲げた車の一団がクラクションを鳴らしながら通り過ぎていく。ベランダにスイス国旗を掲げた家の中から歓喜の雄叫びが聞こえた。この時、スコットランドに先制されてビハインドを負っていたスイスがジェルダン・シャキリのゴールで同点に追いついていた。 ドイツを舞台に、ヨーロッパ全土が熱狂する大会は、盛夏を迎える7月14日まで続く。 [著者プロフィール] 島崎英純(しまざき・ひでずみ)/1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。
島崎英純/Hidezumi Shimazaki