EURO開催地のリアルな“今” 祭典を祝う国内…クラブとはひと味違うサッカー大国の盛り上がり【現地発コラム】
代表の雄姿を見てさすがに興奮も…
そんなこんなで迎えた大会開幕。6月14日の金曜日に開催国ドイツとスコットランドのオープニングマッチがミュンヘンで行われた。そこでフランクフルト在住の筆者は友人と市内中心部を貫くマイン川沿いに設営されたファンゾーンでのパブリックビューイングへ繰り出してみた。 試合1時間前に到着すると、すでに多くの観衆が芝生にシートを敷いて大型ビジョンの前に陣取っている。ただ、その雰囲気はとても穏やかでフェスタのようなイベント感が漂っていた。年齢層は20代、30代あたりが中心だが、男女比はほぼ同等で、大会に合わせて観光目的でやってきたような方々も数多く見受けられた。 そうこうしているうちに試合開始直前になると、いつしか一帯は立錐の余地もないほどの人数に膨れ上がり、ドイツ国歌を斉唱する際はさながらロックコンサートのような雰囲気になった。大会前は平静を装っていたドイツ国民も、代表の勇姿を眼前で目撃すれば興奮が喚起される。万国共通とも言えるこのムードもしかし、勝利という結果が伴わなければ、勢いが萎んでいく。 筆者はスペイン・セビージャにて行われたEL決勝でアイントラハト・フランクフルトがグラスゴー・レンジャーズと対戦した際、同じ場所のパブリックビューイングを体験したことがある。その時の周囲の雰囲気は騒然としていて、まさしく戦場のような趣があった。ドイツのサッカーファンは愛するクラブと自身を一体化して捉える向きがあり、いわばライフワークとして当該クラブを支持している。すなわち、クラブの勝敗が自らの人生の成否をも左右するような感覚で捉えているため、その熱量も凄まじいのだと思う。 一方で、W杯やEUROに出場する代表チームになると、若干フランクに対象を捉えているように思える。そもそも代表の試合をパブリックビューイングで観る方々は日常的にサッカーに高い関心を示しているわけではなかったりもする。先述したように大会というイベントを純粋に楽しみたい客層で、それがクラブ単位と国単位の大会を良い意味で棲み分けているように思えた。安全、安心にサッカーを観戦するなかで、その場にはお祭りのような華やかで心が沸き立つ空気が漂っている。これは「EURO」という国際大会がもたらすスポーツイベントの1つの理想の姿なのかもしれない。