新型『イプシロン・ラリー4』投入の名門ランチア、イタリア王者の賞典で2026年からのERC参戦を表明
かつてGr.A時代のWRC世界ラリー選手権を席巻した伝説のブランド、ランチアが満を持して投入する新世代モデル『ランチア・イプシロン・ラリー4 HF』に関し、イタリア国内ラリー選手権で来季2025年に導入されるワンメイクカップの優勝者を対象に、2026年からのERCヨーロッパ・ラリー選手権参戦権を賞典として付与。これにより、ランチアのファクトリーチームがシリーズに復帰し、ERCでの歴史を再始動することとなった。 【写真】往年のマルティニカラーを彷彿させるリバリーをまとったランチア・イプシロン・ラリー4 HF 1980年代以降、この欧州選手権への主だった関与がなかったランチアだが、元ERC王者でWRCでも活躍を演じた名手ミキ・ビアシオンと、現代のERCで通算2勝を記録するイタリアン・マイスター、アンドレア・クルニョーラが開発に関与したイプシロン・ラリー4 HFの登場で、その状況は一変することになった。 ランチア・コルセHFのディレクターを務めるエウジェニオ・フランツェッティも「これは新しい(共通モジュラー)プラットフォームから始まる新型のラリー4だ。ステランティス・モータースポーツの他の2台(オペル・コルサ・ラリー4/プジョー208ラリー4)とは異なる」と改めてイプシロンの潜在能力を強調した。 「エンジンは1.2リッターの3気筒で212PSだが、もうひとつの大きなメッセージは、これが標準エンジンだということだ。ターボチャージャーと排気システムのみを変更しているが、すぐそれだけの出力に到達した。車重とパワーのバランスは完璧で、競技やレースに出場したい若手ドライバーに最適なモデルになっている。重要な点は(チューニングされていない)標準エンジンで始めれば、kmあたりのコストが低いということ。若いドライバーを後押しし、我々と一緒に参加してもらうことが非常に重要なんだ」とフランツェッティ。 「ギアボックスはサデフ製の5速シーケンシャルで、ショックアブソーバーはオーリンズの3WAY調整式、ブレーキディスクも330mmと大きい。とくにイタリアのラリーでは上り坂と下り坂が多いので、クルマを止める必要があるからね」 ホモロゲーションは2025年1月1日からで、ステランティス・モータースポーツのレーシング・ショップでは注文の受け付けが開始されており、すでに長い順番待ちリストができているという。価格は7万4500ユーロ(約1230万円)で、フランツェッティも「クルマの品質と性能を考えると、我々はこの種の市場にぴったりだと思っている」と自信を示す。 ■「若者にとって素晴らしい機会だと思う」とビアシオン 前述のとおりイタリア選手権で2025年より創設される“トロフェオ・ランチア”は、優秀な戦績を収めたドライバーにはERC出場権獲得への足掛かりとなり、毎戦およそ2500ユーロ(約40万円)の参戦料でレーシングスーツ、チームキット、通信などの各種必要ツールが用意され、全6戦を勝ち抜いた優勝者が2026年にランチアのファクトリードライバーとしてERCに参戦する機会を得る。 「ランチアがファクトリーチームでERCに復帰すると確定したことは、選手権にとって素晴らしいニュースだ」と語るのは、そのERCでチャンピオンシップマネージャーを担当するイアン・キャンベル。 「このような象徴的なブランドが、新しいトロフェオ・ランチアの優勝者への賞典ドライブをサポートすることは、ERCの強さと魅力を示すもうひとつの証拠だ。我々はトロフェオ・ランチアを非常に注意深く、そして大きな期待を持って見守っていきたいと思っている」 先月末には、イタリアはピエモンテ州に位置するステランティス保有のバロッコの試験場にて、ブランドのラリー界への復帰を祝うメディアドライブが開催され、かつてフィアットが設立したテストコースでランチア・イプシロン・ラリー4 HFの開発を担当したビアシオンとクルニョーラが、その新型マシンのパフォーマンスを披露した。 ランチアのブランドアンバサダーであり、1983年にはランチアでERCを制覇したイタリアの伝説的人物であるビアシオンは、このプロジェクトについて聞いたとき「すぐに18歳に戻りたいと思った(笑)」と明かした。 「これは若者にとって素晴らしい機会だと思うし、本当に感激している。そしてランチアとともに、この素晴らしいスポーツであるラリーの世界に戻る機会を得られたことに大きな喜びを感じている」と続けたビアシオン。 「もちろん、これでランチアはモータースポーツに復帰したが、スパークリングワインをかざして正面から行くのではなく、後部ドアから入るのが賢明だ。誰もが知っているように、世界ラリー選手権は本当に非常に高額だが、このラリー4はヨーロッパでもっとも人気のあるカテゴリーで、国内選手権のドライバーのほとんどがこのカテゴリーで競っている」 「もちろん、誰もがトップクラスで競えるラリーカーを手に入れることが夢だが、現時点では将来のルールはまだ整っておらず、競争力をつける……または世界ラリー選手権で競うためのコストは高すぎるのが現実だ。しかし、FIAが何かを変えるのであれば、夢を見たいと思う。私はランチアのアンバサダーとしてだけでなく、ラリーファン、ランチアファンとしても話しているからね。これは夢であり、夢を見ることは禁じられていないのさ」 [オートスポーツweb 2024年11月01日]