宇宙物理学の未解決問題「なぜ大質量のブラックホールが存在するのか?」考えられている2つのモデルとその問題点
巨大ブラックホールからの重力波を検出するには
最後に巨大ブラックホールの連星からの重力波に関する数値を大まかに紹介します。この数値の大きさから、これを観測するためには巨大な重力波検出器が必要となることを理解していただけると思います。 M87銀河の中心にある巨大ブラックホールのような太陽質量の100億倍近くのブラックホールが2個、連星をなしているとしましょう。そして簡単のため、その公転周期を約2年と仮定します。 実際には、重力波の周期はその半分の約1年ですので、これは振動数が「ナノヘルツの重力波」となります。 観測される重力波の振幅は、我々からその天体までの距離に反比例します。たとえば、我々からM87銀河までの距離を仮定すれば、その場合に観測される重力波の振幅は10のマイナス14乗程度になります。 このような超長波長の重力波を観測する方法が、「パルサータイミング法」を用いた宇宙の巨大検出器です。それは、実際にどのように行われているものなのか、その原理を、以降の記事ではくわしく紹介していくことにします。
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)
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