騒音緩和につながるか──国際線強化、羽田空港導入した新着陸料金体系とは
さらに国際線50便増便見込み ── 環境対策で着陸料に新たに“騒音値”導入
羽田空港の上空には、離陸したばかりの飛行機や着陸態勢に入っている飛行機がたくさん飛んでいます。羽田上空は、常に“空の渋滞”が起きている状態なのです。 「この空の渋滞を解消する策として、国土交通省は離陸や着陸の飛行経路を見直しました。飛行経路を見直しにより、発着効率を上げることができます。これにより国際線は1日あたり50便の増便を見込んでいます」(同)。 羽田空港の発着回数が増加すれば、空港周辺の環境悪化という新たな問題が生じます。特に、地元住民から心配されているのが、騒音と振動です。国土交通省は、周辺住民への影響が大きいとされる内陸部に位置するB滑走路の出発便数を現行の24から20に削減する方針にしています。 また、新たな取り組みとして、空港使用料体系の見直しも進めました。これまで、空港使用料は最大着陸重量によって算出されていました。2017年から、着陸料の算出方法に騒音値が加えられたのです。つまり、低騒音機なら着陸料が安くなります。 「航空機の導入は、航空各社が中長期計画に基づいて決めています。飛行機の機体は高価ですから騒音値を含めた料金体系が導入されても、すぐに買い換えられるものではありません。料金体系を変更したからと言って、羽田を発着する飛行機が即時に低騒音機に切り替えられることはないでしょう」(同)。 新しい料金体系に移行してから、1年も経っていません。そのため、まだ目に見える効果はないようです。しかし、「騒音値を料金体系に組み込んだことで、今後は航空各社が低騒音機に切り替えていく流れになっていくと思われます」(同)。
利用者だけでなく空港周辺住民のためにも
羽田空港の機能強化を巡る問題は、これですべてを解決できたわけではありません。最近は、飛行機からの落下物も頻繁に報告されています。これらの対策も急務です。 飛行機の発着回数が増えて利便性が高まることは、利用者として歓迎です。その一方で、羽田空港発着の飛行機が増えることで、住民の生活が脅かされるようになってしまっては元も子もありません。 羽田空港の料金体系の見直しは、利用者・住民が共存共栄を目指す第一歩に過ぎないのです。 小川裕夫=フリーランスライター