だるまと夜景のローカル線
日が暮れるのを待ち、2両編成が吉原に入線してきた。一般客は1両目に、予約客は2両目に誘導されて出発を待つ。ドアが閉まり、車掌さんに促されて乗客が「3、2、1…」とカウントダウンすると、われわれ2号車の車内は真っ暗になった。 なぜ夜景が売りなのか。岳南電車の沿線は製紙業を中心に多くの工場が集まっていて、その間を縫うように走っているため、間近に夜景を楽しむことができる。冬は空気も澄んでいて、ライトが配管や煙突に反射してまぶしいほど。全開の窓から入る冷気も気にならず、車内放送でどんな工場が見えるか詳しく説明してくれるのもありがたい。往復約50分の旅はあっという間に終わった。 人口減による乗客減少など、ローカル鉄道の経営は厳しくなる一方だが、だからこそこうして頑張っている鉄道を心から応援したい。 ☆共同通信・八代到