反イスラエル学生デモが米国で燃え上がる理由、背景に深刻な分断 警官による排除にトランプ「見るも美しい光景」
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が激しさを増すなか、米国の大学で学生の抗議行動が広がっています。「イスラエルの行為は虐殺だ」として米国政府のイスラエル支援を批判し、大学当局に対してはイスラエルを支援するような投資をやめるよう求めています。各地のキャンパスでは警官隊が投入され、大量の逮捕者が出るなど事態は深刻さを増しています。学びの場である大学キャンパスで何が起きているのでしょうか。やさしく解説します。 【図】全米に広がる反イスラエルの学生デモ (西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス) ■ コロンビア大に警官突入 ガザのイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したのは、2023年10月のことです。約1200人が殺害され、約250人がハマスの人質に。これに対しイスラエルはただちに報復を開始し、ガザ北部をほぼ制圧。避難民が集中する南部への攻撃も始めています。 イスラエルは「ハマスの壊滅」を目標にしていますが、武器を持たない民間人に多数の犠牲が出ています。ガザでの死者はすでに3万5000人超。もはや自国防衛や人質奪還の目的を超えた大量虐殺との声も強まってきました。 こうした現状を前に、欧米ではイスラエル批判の声が強まるばかりです。とくに目立つのが若い世代。米国のいくつかの大学では、外交・軍事面でイスラエル寄りの姿勢が目立つ米政府に対し、デモや集会などの抗議行動が発生していましたが、4月に入って全米規模に拡大しました。 きっかけは、ニューヨーク市のマンハッタンにある名門・コロンビア大学での出来事です。学生たちは4月17日から学内に数々のテントを設営し、大学がイスラエルと関連のある企業などに投資することをやめるよう要求していました。これに対し、大学側はテント排除のため警官の突入を許可。学生と警官が衝突し、100人以上が逮捕されたのです。
■ 全米の大学に拡大、2800以上が逮捕 その後もコロンビア大学での抗議活動は続きます。4月下旬にはハミルトン・ホールという建物を学生が占拠し、再び警察が突入してさらに100人以上が逮捕されました。 その様子がSNSや動画サイトで拡散され、抗議の声は瞬く間に全米に広がりました。各地の大学生がコロンビア大の学生に連帯の意を示し、次々と抗議行動ののろしを上げたのです。キャンパスにテントを張ってキャンプし、納入した学費をイスラエル支援に投資することを許さないと主張する。そのスタイルは多くの大学で共通しています。 米紙ニューヨーク・タイムズの集計では、5月13日現在、60を超える大学で2800人以上が逮捕されたり、拘留されたりしています。その中にはエール大、マサチューセッツ工科大(MIT)、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)など、日本でもよく知られた名門も含まれます。 学生だけでなく教授陣も抗議行動に参加している例もあります。ガザ情勢は世界各国の関心事だけに、英国やフランスなど米国以外の大学でも抗議行動が起きています。