【社説】25年度予算案 平時に戻す姿勢見えない
経済財政運営の指針、骨太方針に記された「歳出構造を平時に戻す」との政府方針はまたも空念仏に終わった。 政府が閣議決定した2025年度の一般会計予算案は歳出(支出)総額が115兆円を超え、当初予算ベースで2年ぶりに過去最大となった。 今月の臨時国会で、14兆円近い規模の24年度補正予算が成立したばかりだ。補正予算と25年度予算案は編成作業が重なる。一体として見れば歳出の膨張は目に余る。 補正予算は10月の衆院選初日に石破茂首相が「前年を上回る」と表明し、規模ありきで編成したのは明らかだ。 歳出の急拡大をもたらした新型コロナウイルス禍が収束し、エネルギー価格の急騰も落ち着きつつあるのに、平時に戻る気配はない。 予算案総額を押し上げたのは防衛費や社会保障関係費、地方交付税交付金などだ。 GX(グリーントランスフォーメーション)への投資推進、人工知能(AI)や半導体産業の基盤強化にも多額の予算を積んだ。物価高と人件費増も拡大要因である。 改まったのは、新型コロナ禍対策などで一般予備費と別枠で設けた特定目的の予備費を削り、物価・賃上げ促進予備費1兆円がなくなったことぐらいだ。 国債の利払いや償還に充てる国債費は5年連続で過去最大となった。国債残高が増えたことや、利払い費の想定金利の上昇を織り込んだ。 歳入(収入)面では、好調な企業業績を背景に法人税、所得税、消費税がいずれも増加し、税収は過去最高となると見込む。 これに伴い、新たな国の借金である新規国債発行額は28兆円台となり、17年ぶりに30兆円を下回った。財政健全化への一歩と受け止めたい。 それでも財政健全化目標である国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を25年度に達成するのは困難とみられる。 国と地方の長期債務残高は25年度末に、1330兆円に達する見通しだ。国内総生産(GDP)比は211%で、先進7カ国で突出している。財政健全化の取り組みを加速しなければならない。 財務省幹部は政府予算案をベストと自賛するが、原案通りに成立する見通しはない。与党が衆院で過半数の議席を持たないからだ。国会での修正は必定である。 与党が賛成を取り付けたい国民民主党は所得税の課税最低限の引き上げを、日本維新の会は高校授業料の無償化をそれぞれ求めている。 与党が予算成立の数合わせのために野党の要求を受け入れれば、さらなる歳出拡大につながる。与野党が協議すべきは政策の妥当性だ。 アベノミクスに批判的だった石破氏が首相就任後に変節し、財政拡張路線を続けるのは問題だ。国会で個別の予算の必要性や費用対効果を厳しくチェックしてもらいたい。
西日本新聞