ココイチ 飽きないカレー1200店 経営・接客独自の育成体制
■自分流にアレンジ
名古屋の郊外、ベッドタウンの愛知県清須市(旧西枇杷島町)にカレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)の1号店がある。出店当時の1978年1月は周囲に田んぼが広がり、家賃7万円、広さは12・5坪、カウンターのみ20席の店舗だった。現在は周囲に住宅も立ち並び、記念館を併設した店舗となっている。 創業者・宗次徳二さん(76)は開業当時29歳。カレー店開業前に経営していた喫茶店で「万人がおいしいと思う、飽きのこないカレー」を目指したメニューを開発した。好評だったことから、カレー専門店の開業を決めたという。 こだわりのないカレーは、客が自分流にアレンジできる余地があった。ごはんの量、辛さは好みで調整できるようにした。好みの具材を複数のせるトッピングもメニュー化され、「マイカレー」を注文するワクワク感が話題を集め、開業後10年で100店舗まで急拡大した。
■独立を支援
急拡大しても高レベルの接客を維持できたのは、人材育成体制を整えたからだ。 壱番屋の本部は、独立して店舗の経営を目指す社員を「BS(ブルーム・システム)社員」として各店舗に配置し、実地で店舗経営の修業をさせる。本部社員が店舗を訪れて指導・助言をしたり、会社の方針を学習する機会を提供したりして、育て上げる。 基準に達しなかったり、自ら見切りをつけたりして、やめていくBS社員もいる。本部でBS社員の教育を担当する大湾朝也さん(40)は「独立して成功するのに、それまでの経験は関係ない。誠実で、目標に向かって努力できるかどうか」と話す。独立資格を満たしたら、会社を「卒業」させ、独立経営者として契約し、店舗を任せる。この仕組みが野心のある者たちの心をつかんだ。宗次さんはBS制度をたとえて「社長製造法」と呼んだ。 「あと1~2年で独立したい」と話すのは、BS社員で一宮木曽川店の店長・若原駿介さん(25)だ。社長を目指して新卒で壱番屋に飛び込んだ。一定の賃金を受け取りながら、試行錯誤し、経営ノウハウの習得に集中できることにメリットを感じている。目標は「金持ちになって家族と幸せに暮らすこと」だ。 BS社員を経て独立した一人が大坪辰徳さん(43)。「独立後数年は思うように売り上げが上がらず大変だった」と話す。 独立後も本部の経営支援は手厚い。壱番屋は「絶対に失敗させない」方針で、経営上の助言や人材確保の支援、キャンペーンや広告などのPRなど多岐にわたって経営を支援する。大坪さんは独立直後の苦労を乗り越えて現在、経営店舗を名古屋市内の3店舗に拡大している。