映画『BELIEVE』監督が明かす広瀬すずがナレーションを思わず“忘れた”瞬間「そのとき手応えを」
日本代表にはわがままな選手は1人もいない
――インタビューの中で印象に残っていることはありますか? 今回、日本代表のレジェンドとして田臥勇太さんと佐古賢一さんにお話を伺ったのですが、佐古さんが「自分たちは時間を止めないようにもがいていた世代だ」とおっしゃっていたんですね。勝てないかもしれないけれど、でも次の世代に繋げていかないといけないと。 そして、その佐古さん世代の思いは、田臥さんたちの世代に引き継がれていきます。 前回のリオ五輪の日本代表は田臥さんが最年長で、そこに今回最年長の比江島さんもいました。このエピソードは映画では使えなかったのですが、比江島さんが当時のことを「日本初のNBAプレーヤーとしても有名で、最年長なのに、リバウンドにもルーズボールにも突っ込んでいって。愚直にプレーをする姿を見せて、あとは下の世代がやりやすいようにチームの雰囲気を作ってくれた」と話してくれて。そして、その田臥さんの背中を見て、今回のワールドカップでは、僕も同じようにしようと思っていたと言うんです。 過去の勝てない代表を経験している選手たちがチームの雰囲気を作っていく。世代の融合が受け継がれてきた結果が、今の日本代表なんです。 これはトムさんがおっしゃっていたのですが「日本代表にはわがままな選手は1人もいない。チームファーストの選手が集まっている。ベネズエラ戦で速攻した馬場さんをフォローしようと、みんなが走ったあのプレーは、本当にうちのチームを象徴するプレーでした」と。 ――今回、練習風景やロッカールームの映像もありましたが、コートの外でもチームの一体感を感じられますよね。 そうなんです。例えば、西田(優大)さんは、今大会であまりゲームに出る機会がありませんでした。でも練習では、ずっと相手側のフォーメーションなどを担当していたそうです。これは自分たちのフォーメーションに加え、相手チームのフォーメーションも覚えていないとできないこと。ベンチの選手たちも、チームのために、そういう目に見えない努力をしていたんです。ジョシュ(・ホーキンソン)選手も、リバウンドやゴールシーンがフォーカスされがちですが、目立たないところでずっとスクリーンをして、壁になっていたり。 点は取らないけれど、スタッツ(個人のプレー成績)には表れないけれど、全員がチームのために何ができるかという共通認識を持って、考えて、あの場に立っていた。 もしかしたら映像では表現しきれないかもしれないけれど、ああいう彼らの思いを届けたいと思って、作っていました。