「鼻からスプレー」の痛くないインフルエンザワクチンが2024年秋から接種可能に。効果は?接種年齢は?デメリットは?【小児科医】
生ワクチンならではの副作用には注意
どんなワクチンにも、副作用・副反応はあります。たとえば注射の場合は、注射した部分の痛み、腫れ、赤み、注射後の発熱などが一般的です。経鼻ワクチン(フルミスト&reg)ではどのような副作用があるのでしょうか? まず経鼻ワクチン(フルミスト&reg)は、生ワクチンです。これは、不活化したウイルスを含む注射のワクチンとは違い、まだ生きたウイルスが含まれています。なお、ロタウイルス、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、おたふくなどのワクチンも、生ワクチンです。 生ワクチンは、弱毒化はしているものの、生きたウイルスを含むため、どうしても感染・発症のリスクがあります。たとえば「ロタウイルスのワクチンを飲んだあとに、実際にロタウイルスに感染したときと同じような症状が出る」といったように、「経鼻ワクチン(フルミスト&reg)を鼻から接種したあとに、インフルエンザと同じような症状が出る」といったことが生じます。具体的には、発熱、鼻水、せき、のどの痛み、頭痛などです。なお年齢や基礎疾患などにもよりますが、およそ10%ほどでこうした症状が出うる、という報告があります。 ただし、ワクチン接種をせずにインフルエンザを発症した場合は、これらの症状にとどまらず、肺炎や脳症、精神神経症状(異常行動など)が生じる可能性があります。経鼻ワクチン(フルミスト&reg)の接種の後は、ワクチンのせいで、これらの症状が出ることはありませんでした。 なお臨床試験の段階で、経鼻ワクチン(フルミスト&reg)を2歳未満に接種した場合は、逆にインフルエンザ症状による入院や、喘鳴(呼吸がゼイゼイすること)が増加してしまいました。よって経鼻ワクチン(フルミスト&reg)が接種できる対象年齢は、2歳以上と定められているのです。
問題点は「高い」「在庫がない」「鼻風邪を引いていると効果がおちる」
日本の厚生労働省においては、2023年の段階で、すでに経鼻ワクチン(フルミスト&reg)が使用できる(2歳以上)ように薬事承認がおりています。 では実際に2024年、今年の秋や冬から接種ができるかというと、なんともいえない、というのが実情です。というのも、新しいワクチン全般に共通することですが、製薬会社からどれくらいの数が供給されるのか、各医療機関で在庫がどれほど確保できるかなどが予想できないからです。 さらに皮下注射(不活化ワクチン)と同様に、経鼻ワクチン(フルミスト&reg)も自費での接種になります。国が定期接種と定めていないため、無料で接種することができません。自費の場合は、各医療機関によって定める値段が異なりますが、(定期接種化される前のロタウイルスワクチンがそうであったように)1万円以上などの高額も予想されます。 また接種する際に、鼻風邪やアレルギー性鼻炎(花粉症)などで鼻水が出ていると、経鼻ワクチン(フルミスト&reg)の効果が低下するのではないか、という見識もあります。そもそも鼻には、外からの異物を入れないようにするために、鼻毛(さらにこまかい繊毛(せんもう)という組織もあります)や鼻の粘液があります。そもそも鼻水がある状態では、経鼻ワクチン(フルミスト&reg)の成分が鼻の粘膜に適切に付着しませんし、さらに鼻毛や繊毛によって排除される可能性があるからです。