川口美喜子「80歳以上の2割が低栄養傾向。フレイル状態を防ぐには?和食は体に良いが塩分に注意。高齢者こそおやつを食べて」
70歳前後で体の不調に見舞われた瀬川瑛子さん。いつまでも歌い続けたいという願いをかなえるために、栄養学を教える医学博士の川口美喜子さんが効果的な食べ方を指南します(構成=丸山あかね 撮影=鍋島徳恭) 【一覧】あなたは大丈夫?「食べ方」チェックリスト * * * * * * * ◆調味料を足す前に素材の味に親しむ 川口 瀬川さんは食事面でどんなことに気をつけていますか? 瀬川 塩分を摂りすぎないようにしています。なにせ母から、「お味噌汁は塩分が多いから、汁は飲むな」と刷り込まれて育ちましたので。ところが近年になって、お味噌汁自体が体にいいと知ってびっくりしました。 川口 発酵食品のお味噌には、植物性乳酸菌という、生きて腸に届く乳酸菌が含まれているので、腸内環境を整える効果が高いと言われます。また、お味噌の原料である大豆には、女性ホルモンを補う働きがあるんです。ただ、和食は気をつけないと、塩分を摂りすぎてしまう可能性があります。 瀬川 そうなんですか! 川口 たとえば和食の朝定食の定番は、焼き魚、納豆、梅干し、味噌汁。一見するとヘルシーなのですが、これだけで4~5gの塩分を摂取していることになります。1日の理想的な塩分摂取量は6.5~7.5gなので、昼食、夕食まで含めると目標値を軽くオーバーしてしまうのです。
瀬川 煮物なども、ついつい濃い味つけにしてしまいますよね。 川口 日本人の死因で最も多いのはがんですが、2位と4位は心疾患と脳血管疾患。これを合わせると死亡率はがんに近くなる。いずれも高血圧が関連する病気なので、塩分は大敵です。 瀬川 濃い味が好きな人にとって、塩分を控えるのは難しそうですが。 川口 すぐに慣れるものですよ。病院に勤めていた時、よく患者さんに「味が薄い」と言われました。でも1週間も経つと、同じ患者さんが「僕好みの味にしてくれてありがとうございます」と言う。もちろん何も変えてません。(笑) 瀬川 好みも割といい加減なんですね。(笑) 川口 多くの方がお料理は調理段階で味つけをするものと思い込んでいます。でもまずはそのまま食べてみることを習慣化していただきたい。物足りないと感じたら、ちょっと塩コショウする、ちょっとお醤油をつけるようにする。それだけで塩分をずいぶん減らすことができます。 瀬川 確かに野菜スープなどは、調味料を使わなくても、野菜から出る旨みだけで十分に美味しいですよね。 川口 家系的に注意すべき病気と、育った家庭の食習慣も把握しておく必要があると思います。親戚に高血圧系の病を患う人が多いようなら、薄味を心がけたほうがいいですね。 瀬川 高血圧を防ぐため、あるいは改善するために、減塩以外にできることはありますか? 川口 カリウムが豊富な果物や海藻、豆類を積極的に取るとよいでしょう。というのも、塩分に含まれるナトリウムを尿とともに体内から排出するためにはカリウムが必要だからです。 瀬川 体って奥深いですね。
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