あまりの惨敗で「逆に総辞職できない」異常事態…早くも挙がる「ポスト石破茂首相候補」のまさかの名前
■永田町に出回った「高市早苗幹事長説」 もともと、今回の選挙では、裏金問題の逆風による自民党の大敗が予想されていただけに、幹事長交代説は選挙期間中から永田町に出回っていた。 永田町関係者は「一時は総裁選で石破氏と接戦を繰り広げた高市早苗氏を幹事長にする案もあがっていた。高市氏を自民党ナンバー2にすれば、石破首相になって離反してしまった保守層を引き戻せるだけでなく、不満を抱えた保守系議員が高市氏を中心にまとまって『石破降ろし』を進めるのを防ぐことができるという狙いもあった」という。 しかし、選挙結果は自民党が過半数を割るだけでなく、公明を足しても過半数に届かないという予想以上の大敗となり、泥船で壊滅寸前の石破政権を支えるのは高市氏にとってもメリットよりもデメリットが大きい状態に。 ■「森山氏の交渉力」に頼らざるをえない また、一部野党の賛成を得なければ法案も予算案も衆議院で通すことができなくなったため、森山氏の力に頼らざるをえなくなってしまった。 森山氏はこれまで国対委員長として国会運営における野党との交渉役を長く担ってきた経験があり、自民党内だけでなく野党重鎮ともパイプがある「党人派」として知られている。 その交渉力がなければ、これから迎える荒波の国会を乗り切ることができないと石破首相も考えており、選挙結果の責任論よりも、森山氏の続投起用が優先されたと言えるだろう。 そんな、石破・森山体制で迎える国会はどうなっていくのか。
■自民党政権の続けるための「ギリギリのライン」 今回の選挙結果は、自民党政権を続けることができるギリギリのラインだったと言える。 自公では過半数割れしているが、国民民主党の議席数を足し合わせれば過半数を達することができるからだ。 国民民主は民間企業の労働組合(連合の同盟系)が主な支持母体であり、経済団体である経団連に支えられている自民党と政策面で一致することが多く、これまでも連携を重ねてきた。 2022年度の当初予算案には、野党でありながら賛成したという異例の経歴もある。 年間予算である当初予算案は、政府の1年間の政策を数字で表したものでもあるため、国民民主が賛成したことには「政府への白紙委任で野党としての責任放棄」「与党入りしたいと捉えられても仕方ない」という批判が立憲だけでなく、維新からも飛んだ。 だが、当時の岸田文雄首相が、ガソリン税を一時的に軽減する「トリガー条項」の凍結解除について検討すると述べたことを受けて、玉木雄一郎代表は賛成に回ることを決断した。 結局、トリガー条項の凍結解除は行われなかったため、翌2023年度の予算案には国民民主党は反対したが、その後、同党で参院議員をしていた矢田稚子氏が総理大臣を支える首相補佐官に起用されるなど、自民からのアプローチは続いている。 ■国民民主党が仕掛ける「攻勢」 自民党関係者は語る。 「もし、自民と公明に国民民主の議席を足しても過半数に届かない結果になっていたら、石破政権は崩壊して政界再編が起きていたかもしれない。ただ、これまで当初予算案に賛成した過去もある国民民主を引き込めば過半数が得られるという見込みができたことにより、石破首相は首の皮一枚つながったと言える」 しかし、国民民主党も躍進で勢いづいているだけに、石破政権にさまざまな攻勢を仕掛けている。 すでに「年収103万円の壁」や「トリガー条項凍結解除」が議題に上がっているが、そうした要求を受けながら政権や国会を運営していくのは至難の業でもある。 また、もし閣僚のスキャンダルなどが出れば、石破政権に協力すること自体にマイナスイメージがつきかねない。 そして、党内からの不満も噴出しているため、場合によっては中から刺されることもあるだろう。 まさに内憂外患の石破政権。 前途多難な中で国益のために日本を引っ張っていくことができるのかが、まさに問われている。 ---------- 宮原 健太(みやはら・けんた) ジャーナリスト 1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしてニュースに関する配信もしている。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。 ----------
ジャーナリスト 宮原 健太