初めて議長国を務める日本 G20大阪サミットの注目点は?
●大阪サミットの最大の注目点は?
G20を批判する声もあります。これまでの議論の焦点は経済格差、低所得国の債務問題、環境問題やグローバル企業の弊害など本当に重要な問題に対処しておらず、G20は国際社会全体のためではなく自国の利益を追求するための議論の場となっているともいわれています。 今回の大阪サミットでは、自由貿易の推進、世界経済の成長、格差への対処、気候変動問題、海洋プラスチックごみ問題を始めとする地球規模課題、デジタル経済への対応や、高齢化社会への対応などが重要な議題になります。議長を務める安倍晋三首相は、これらについて議論を推進する決意を表明しています。 どれをとっても容易でない問題ばかりですが、なかでも自由貿易の推進のためにどのようなメッセージを発出できるかが最大の関心事です。以前、G20首脳会議では、「保護主義と戦う」ことが共同声明に盛り込まれてきましたが、昨年のアルゼンチン・ブエノスアイレス会議では米国の反対により削除されました。 また6月8、9日、G20首脳会議に先んじて福岡で開かれた財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明でもこの重要文言は盛り込まれませんでした。 「米国第一」に強くこだわり、強引な方法を用いてでも自国にとっての貿易の不均衡を是正しようとするトランプ大統領の影響力の大きさにかんがみれば、今回の大阪サミットでもこのメッセージを打ち出すことは困難かもしれません。しかし、米国の都合で結論がゆがめられるようになると、結局G20は弱体化していくのではないかと懸念されます。
G20首脳会議では多くの国の指導者が一堂に集まるので、二国間でも会談が行われます。今回、特に注目されているのは米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談です。 米中両国は、貿易・通商問題に関する担当の高官協議を重ねてきましたが合意に至らず、トランプ氏と習氏との間で決着をつけることとなりました。それでも、両者の会談はなかなか実現しませんでしたが、さる6月18日の両首脳の電話会談でようやく決定されました。 米中首脳会談がどのような結果になるか、事前の予測は困難です。トランプ大統領は、会談で貿易問題が解決しなければ、中国からの輸入品のほぼすべてに追加関税を課す「第4弾」の制裁を実施すると表明しています。また、世界的な通信機器メーカーである中国の華為技術(ファーウェイ)にはすでに制裁を科していますが、その他の中国企業に対しても追加制裁を科すことを検討しています。 米国が重視する知的財産問題や産業補助金などは技術的性格が強く、実務者が合意の道をつけておかなければ、両首脳の会談でも解決困難だといわれています。 さらに、香港で「逃亡犯引き渡し条例」をめぐって大規模デモが発生したことも、習主席にとって不利な材料になります。両首脳といえどもすべての問題を決定することは不可能です。 ともかく、トランプ大統領は、今回のG20首脳会議では「保護主義との戦い」を共同声明で打ち出すことに反対する一方で、習近平主席との会談では「不公正な貿易」の是正を求めることになりそうです。そのため、米国の姿勢は一貫しているかが問われる可能性もあります。