2023年度の【フラット35】利用者、中古マンション・戸建てで年収倍率が下がる、全期間固定型ローンを活かすポイントも紹介
注意したいのは、住宅取得のために借りているのは【フラット35】だけではないことだ。全国平均で見ると、手持金(頭金)は12.7%、【フラット35】の借入額は82.6%、その他に民間金融機関からの融資が4.5%などとなっている。【フラット35】の窓口となる金融機関の住宅ローンで、不足する分を補っている状況もうかがえる。 さて、融資の額で前年度より減少したことの影響を受けて、年収倍率も「建売住宅」「中古マンション」「中古戸建」でかなり下がるという結果になった。中古については年収の5~6倍内に収まっているので、無理のない範囲で借りていることになる。
「変動型」に押され利用者が減る「全期間固定型」の特徴を活かすには?
ここで、【フラット35】の利用者調査の結果と、他の調査結果とを少し比較してみよう。 まず、住宅金融支援機構が実施した【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】と比べてみよう。利用した住宅ローンの金利タイプは、超低金利を受けて「変動型」が増加トレンドで、76.9%を占めた。「固定期間選択型」(15.1%)や「全期間固定型」(8.0%)は減少トレンドにある。 変動型が増加しているのは、0.5%以下などの超低金利が理由だ。当初の金利が低いほど年間の返済額が抑えられるだけでなく、年収に占める返済額の割合(返済負担率)も低くできるので、より多くの額を借りることができるという側面がある。 実際に、首都圏の新築マンションと中古マンションの2023年度の平均価格と比べよう。マンションの取引事例の多い首都圏のデータを見ると、市場全体の平均価格のほうが、【フラット35】利用者の平均購入価額よりも高いことが分かる。より多く借りるために、【フラット35】ではなく、変動型を選択していると推測できる。 ●2023年度(首都圏)の比較 不動産経済研究所:首都圏の新築マンションの平均価格/7565万円 東日本レインズ:首都圏の中古マンションの平均価格/4700万円 【フラット35】利用者:首都圏の新築マンションの平均購入価額/5801.2万円 【フラット35】利用者:首都圏の中古マンションの平均購入価額/3378.6万円 ただし、変動型は適用される金利が変動するため、金利が上昇すると返済額が増えるというリスクがある。返済に余力があれば、そのリスクに対処することができる。 返済余力の一つの指標が、「世帯年収」だ。世帯年収が高いほど家計に柔軟性があるため、返済余力が高いことになる。世帯年収の平均値は、【住宅ローン利用者】では791.1万、【フラット35】利用者では660.5万円で、【フラット35】利用者のほうが低めだ。また、【フラット35】の利用者では、世帯年収400万円未満が19.8%を占めることも特徴だ。世帯年収が低めの人ほど、全期間固定型を選んで住宅ローンの返済額を安定させるほうが得策だ。 一方で、【フラット35】は住宅の性能が高いほど、当初金利を引き下げる【フラット35】Sの引き下げ幅が大きくなる。そのため、住宅の性能が高い注文住宅での利用者が多いという見方もできる。かつては新築マンションも性能面の恩恵があったが、価格が高騰をしている今は、より多額の融資が受けられる低金利の変動型が選ばれるということなのだろう。 いま、住宅ローンについては、さまざまな選択肢がある。取得するのはどんな住宅か、世帯年収やライフスタイルはどうか、などをよく考えて、自身に合う住宅ローンを選ぶことが重要だろう。 ●関連サイト 住宅金融支援機構【2023年度 フラット35利用者調査】
山本 久美子