大阪球場が登場する「パワフルプロ野球」の新作をイベントで楽しむファン（7月、大阪市浪速区で）

　鉄道各社がゲーム業界と連携し、人気ゲームとのコラボレーションや、オリジナルゲームを開発する動きを加速させている。人口減少に伴って鉄道事業の環境が厳しさを増す中、ゲーム業界への「乗り入れ」で新たな需要を掘り起こす狙いがある。（寺田航）

　今年7月にコナミデジタルエンタテインメントが発売した人気ゲーム「パワフルプロ野球」シリーズの新作には、旧南海ホークスの本拠地「大阪スタヂアム（大阪球場）」が登場する。大阪球場は球団売却後に解体撤去され、2003年に商業施設「なんばパークス」として生まれ変わった。

　ゲームでは、大阪球場などを舞台に往年の名選手を操ることができる。ゲームをプレーした大阪市西区の会社員（51）は、「小学生の時に訪れた大阪球場の記憶がよみがえった。懐かしく、わくわくする」と話した。

　球団を保有していた南海電鉄は、人気ゲームとのコラボを通じ、商業施設などを展開する難波エリアの活性化につなげる考えだ。担当者は「若年層だけでなく、ゲームのオールドファンにも足を運んでもらうきっかけになれば」と話す。

　東武鉄道と近畿日本鉄道も4～8月、人気鉄道ゲーム「桃太郎電鉄」とコラボしたイベントを開催。また、銚子電気鉄道（千葉県銚子市）は、ゲーム会社「リアルワールドゲームス」（東京）と組み、スマホ用位置情報ゲームアプリ「トレイントレイン」を開発した。全国の鉄道会社の駅を実際に巡りながら路線を開業していく内容で、7月に配信を始めた。

　日本民営鉄道協会によると、2023年度の大手私鉄16社の輸送人員は93億4300万人。前年度比で6・8％増加したものの、「人口減少やテレワークの定着で、コロナ前を超える水準には達しない」（鉄道大手）との見方が強まる。

　そこで、鉄道に親しんでもらうきっかけ作りとして、ファンの年代層が幅広いゲームに目を付けた。角川アスキー総合研究所がまとめた「ファミ通ゲーム白書2024」によると、国内のゲーム人口は推計で約5500万人に上る。ゲーム業界としても、熱心な愛好家の多い鉄道とコラボし、現実と融合したゲームを提供することで、新たなファンの取り込みに期待する。

　大手鉄道会社では、沿線に「eスポーツ」の体験施設を設置する動きも広がる。今後も、両業界からの相互送客は広がっていきそうだ。