稲盛和夫氏の人材育成論「真のリーダーは、教育でつくるのではなく、探すもの」
素晴らしいリーダーの育成にあたって、経営者が心得ておくべきこと
高収益を上げられる強靭な体力を備えた企業体にしていくには、やはり何といいましても「立派な経営者の育成」が必要です。 設備も人員も製品もまったく変わらないのに、リーダーを代えただけで、その部門の業績が見違えるように変わったという経験をされた方はたくさんおられると思います。リーダーが代わっただけでかくも変わるものか、と思うくらいの業績が変わるという例を、我々は幾多も見ています。 そういう意味では、京セラだけでなく、この低成長・ゼロ成長の時代に入った日本経済においては、本当に優秀で、素晴らしい、真の経営者を見つけ出すことが企業経営にとって必須条件だろうと思います。 今までは誰が経営しても、たとえ大したことのない人が年功序列によって社長になるようなことがあっても、経営はうまくいきました。経済自体が大きく成長していく中では安易な経営でも十分やれましたが、いよいよこの経済環境において、真の経営者が要求される時代がやってきました。 今年は経営者の、つまりリーダーの交代ということがたいへん大切になるだろうと思っています。それでは、素晴らしいリーダーとはどういうリーダーなのか。私自身も考えていますが、ひと言では言えません。 ただ、漠然と考えられるのは、たいへん仕事熱心で、真面目で、そして自主性があり、利己的な心が少なくて、責任感が強く、研究熱心で常に工夫をする人、同時に公明正大な心を持っている人、また、現在の仕事やその仕事の将来に対して自信を持っている人、言葉を換えれば確信を持っている人、「こうすればこうなり、こうなってああなっていくのだ」と自分の事業なり仕事の先が見えている、「いつの何日にはこの事業はこのような状態になる」と明確な像なり姿を描いている人、明るくて運のいい人。 いっぱい挙げましたが、今言ったようなことを少しずつでも、すべて持っているような人が素晴らしいリーダーではないかと思えるわけです。