エヌビディアが研究で夜を明かす時、韓国半導体は52時間の足かせ
半導体研究開発人材は労働時間上限を例外にしようという声が大きくなっている。世界的に競争が激しくなり半導体人材はますます不足するが、韓国の場合、硬直した労働時間規制が加わり技術競争力強化にさらに不利な状況に置かれていると指摘される。 業界によると、最近の半導体業界の危機に対し韓国の先端産業が競争力を持つために労働市場の柔軟化が急がれるという主張が力を得ている。米国など先進国のように労働柔軟性を保障して優秀な人材が没頭して働き、それに見合う十分な補償をすべきということだ。 業界関係者は「一律的な労働時間制度が研究開発生産性と意欲を低下させる恐れがある。次世代半導体技術確保の必要条件である研究開発にオールインするためには人材が存分に仕事ができる労働環境作りが急がれる」と話した。生産職と違い労働時間より成果が重要な職務は規制を緩和すべきということだ。 大韓商工会議所の持続成長イニシアチブ(SGI)は8月に「輸出企業の労働生産性鈍化原因と示唆点」と題する報告書で、「急変する市場環境に速やかに対応し生産性を高めるために柔軟な人材運用が必須」と指摘した。その上で▽労働法制の雇用親和的整備▽労働時間の画一的な規制改善▽職務・成果中心に賃金体系改編――などを提言した。 慶熙(キョンヒ)大学経済学科のオム・サンミン教授は「現行の労働時間制度は長時間労働を減らすために導入したものだが、多様な形態の労働が要求される状況では制約になり得る。必要な部門に柔軟に適用した上で、働いただけ補償し健康権などを保護する追加措置を用意しなければならない」と話す。漢陽(ハニャン)大学融合電子工学部のパク・ジェグン教授は「半導体業は時間との戦いだが52時間制は危険だ。韓国が競争する米国と台湾、韓国を追撃する中国にはこうした制限がなく、仕事をたくさんやれば補償する。52時間制を何年間か猶予したり、管理単位を1年単位にしたり、改善が必要だ」と話した。 ◇「半導体は時間との戦い、52時間制の改善必要」 現行の勤労基準法は1週間の法定労働時間40時間と延長労働時間12時間を加えて最大労働時間を52時間に制限する。政府の特別延長労働を認可されれば1年に90日まで12時間を追加で延長できる。業界によると、サムスン電子は半導体(DS)部門の研究開発職などに限り必要な時期に64時間特別延長労働を施行している。業界関係者はしかしこの制度に対し「会社が必要だからと思い通りにできるのではなく、厳格な条件の下で社員の同意を得なければならない。切実な状況に制限的に使える」と話した。 米国は週40時間の法定労働時間を運営中だが、延長労働時間に制限を設けていない。1週間に40時間を超えて働く場合、追加労働時間に対して正規賃金の最小1.5倍を支給する。ブルームバーグは8月、世界的人工知能(AI)半導体企業エヌビディア社員ら10人をインタビューし、彼らがたびたび週末を含め毎日午前1~2時まで働くなど高強度の業務環境の中でも株式など金銭的補償のためこれに耐えており、離職率は業界平均より低いと報道した。 業界は韓国型ホワイトカラーイグゼンプション制度を検討すべきと主張する。労働時間を基準として業務成果を評価するのに適合しない専門職、管理職、高所得者には労働時間の規律を適用しない方式だ。業界関係者は「米国のように高所得者に対する超過勤務手当てを効率化できるならば労働者間の賃金格差を減らして企業の人件費負担を低くし、追加採用と労働条件改善などの余力も増加するだろう」と話した。 日本は1週間当たりの法定勤務時間を40時間にし、これ以外の延長労働に対しては大企業基準で年間360時間と定めている。米国と似た高度プロフェッショナル制度を置き研究開発などに従事する労働者のうち高所得者は労働時間などの規定を適用しない。 ◇一部で「残業だけ増えて補償ない場合も」懸念 国会では半導体特別法に半導体研究開発人材などを労働時間規制から除外する条項を置こうという声がある。元サムスン電子社長の「国民の力」の高東真(コ・ドンジン)議員は、労働時間など例外規定を明示した勤労基準法第63条で大統領令に定める業務に従事する労働者は週52時間の適用を受けないとし、半導体、ディスプレー、バイオ、二次電池など先端戦略産業業務を追加しようと主張する。 ただこうした動きに現場では懐疑的反応も出ている。半導体業界に従事する40代のAさんは「時間を増やして働くからと創意性と生産性が必ずしも上がるものではない。会社が補償はしっかりしないで残業だけ合法的に強制できる」と懸念する。業界関係者は「労働時間の柔軟性を高めることも必要だが社員が必要性を共感し快く同意できるかが重要だ。社会的共感も解かなければならない課題」と話した。