[ハリウッド・メディア通信] 巨匠スピルバーグに緊張のセールスピッチ! 『ツイスターズ』は不易流行の特撮映画
女性気象科学専門家VS竜巻インフルエンサーの恋
アメリカのNOAAのリサーチ文書によると、1970年代には毎年平均858の竜巻が記録され、現在は平均約1200の竜巻が観測されている。 その数が増えた理由には、気象そのもの以外に、ドップラー天気レーダーが普及したこと、携帯電話やスマートフォンが普及して、瞬時に発達する竜巻の様子を一般人がプロ並みに撮影できるようになり、小さな竜巻が多数記録されたこと。積乱雲の動きを読むシチズン・サイエンティスト(一般の市民が科学的データを記録し、科学発展の貢献者となること)によってより確かなデータ収集が可能になったことも理由の一つだそうだ。とくに、『ツイスター』で主人公となった竜巻チェイサーたちに影響されて、映画の公開以降にチェイサー、そして竜巻ユーチューバーがかなり増えたという。『ツイスターズ』の主役も、女性科学者とカリスマ溢れる竜巻チェイサー兼インフルエンサーのコンビ。 まず、女性科学者ケイトを演じるのが、アイルランド発の原作本を元にテレビドラマ化された「ノーマル・ピープル」(2020)の主演を務めたデイジー・エドガー=ジョーンズ。複雑な感情で体当たりした演技はファンを魅了し、ハリウッド大作映画『ザリガニの鳴くところ』(2022)にも抜擢されるほどに期待された。しかし、原作本のセンセーショナルなヒットに比べると映画の脚本がメロドラマとなってしまった感は否めず、デイジー本人は作品選びに慎重になっていたようだ。『ツイスターズ』の監督がリー・アイザック・チョンに決定したことを知り、この監督とならと、新たなハリウッド大作の主人公に挑戦した理由をIMDbで語っている。 主人公ケイトは学生時代のサイエンス・プロジェクトの惨事から立ち直れないまま、自らの殻に閉じ込められた科学者。プロジェクト・チームの一員だった友人からの依頼で民間の気象研究を手伝うため、母親とも疎遠となっている故郷のオクラホマへ帰省する。そこで出会うのが、竜巻チェイサー兼カリスマ・インフルエンサー。カウボーイハットに軽い身のこなしのタイラーは、あらゆる世代や人種で集められた寄せ集めチームを率いて、竜巻チェイサーの似顔絵入りのTシャツ(Not my first tornadoーこれがはじめての竜巻じゃないよ!)を売って稼ぐなど、現代のユーチューバーらしい自信家。その意気盛んな竜巻チェイスは、ケイトの慎重さとは真逆。しかし、ナルシストに見えるタイラーだが、もとは大気現象を学んだ知識があり、天才的に雲の動きをよみとるケイトにじわじわと魅了されていくのだった。 シリアスで、どこか影のあるケイトの心を開くのが、男優グレン・パウエル演じるタイラー。グレン・パウエルの魅力は『トップガン マーヴェリック』(2022)で次世代トム・クルーズと騒がれ、優秀なパイロット”ハングマン”役もシリアスとコミカルの両刀で熱演し、ベテランのトム・クルーズと良い勝負だった。ニヒルでアクションもこなせるグレン・パウエルは、ロムコム『恋するプリテンダー』(2023)の主演映画で全世界興行収入、まさかの300億円超えを記録し、相手役シドニー・スウィーニーともプライベートでつきあっているそうだ。『ツイスターズ』のケイトの心を解き放つ竜巻インフルエンサー役もまた、ファンを喜ばせることは確実である。 ロッテントマトの質問で、エンパイア・マガジンのジョーダン・ホフマンは、「『ツイスターズ』は、今夏の心ときめく映画であることは間違いない。サウンドトラックもぴったりはまるし、とくに、スター・パワーは直視できないくらい。グレン・パウエルがどしゃぶりの中を白シャツでびしょぬれで歩いてくる様子は、とくに物語に関係がないけれど、まぶしかった。」と答えている。 白シャツとツイスター。ヘレン・ハントの白いタンクトップもまぶしかったなと見比べるのも、楽しい夏の映画鑑賞法である。
otocoto編集部