DePIN(分散型物理インフラネットワーク)とは何か? 持続可能なDePINを築く鍵は?
静的報酬の罠
大規模なプロダクトを集団で開発するよう、貢献者を奨励するために、トークンによる報酬はゲーム化される。一方、プロダクトの使用によってトークンは消費される。 DePINプロジェクトが持続可能であるためには、供給を生み出すための健全な戦略、そしておそらくより重要なこととして、プロダクトに対する真の需要が必要だ。 それがなければ、トークンに対する需要は単に投機的なもの、つまり何十億もの人々の生活に影響を与えることができる有用なインフラプロジェクトではなく、ミームコインのようなものになってしまう。 適切なツールがあれば、供給を生み出すのは簡単だ。労働に対してトークンを提供すれば良い。難しいのは、どれだけの数を提供すればいいかを見極めることだ。成長の後期にはなくなるほど多くはないが、誰も貢献してくれないほど少なくもない数が必要だ。 新しいプロジェクトは「コールドスタート」問題にも特に注意する必要がある。新しいネットワークは、1人の貢献者、あるいは100人の貢献者でさえも大きな価値を提供することはできない。需要への対応を考える以前に、まずある程度の閾値に達する必要がある。 真の需要を生み出すことはより難しい。プロダクト・マーケット・フィットを早急に見つけなければならない。我々の経験では、分散型アプローチが独自に解決できる非常に現実的なペインポイントにフォーカスすることが役に立つ。 近道をしたくなるものであり、我々が見てきた最も一般的な近道は、動的な報酬ではなく静的な報酬を採用することだ。我々はこれを「静的報酬の罠」と呼んでいる。 貢献者の付加価値の高さに関係なく、プロジェクトに関わるだけで報酬を得られるようにすれば、最初のうちは貢献者を惹きつけるのは簡単だ。しかし、静的報酬はネットワークの根本的なインセンティブ構造を壊すため、長期的には致命的になる。 もしヘリウムが、マンハッタンのような人々が住み、働く場所であろうと、デスバレーのような人口の少ない場所であろうと、すべての5Gホットスポットに同じ静的(=固定)報酬を与えたとしたらどうだろう? 人々が最も必要としている場所で受信可能エリアを強化するためのインセンティブは存在せず、通信へのアクセスを民主化し、中央集権的な大手キャリアを打ち負かすというミッションの妨げとなる。 もしハイブマッパーがすべてのドライブレコーダーに同じ静的報酬を出すとしたらどうだろう? 大惨事になるだろう。人々はどんな車にも、それこそほとんど運転しない、駐車したままの車にでさえも、ドライブレコーダーを設置することで報酬を得ることができる。 同じ車に5台も10台もドライブレコーダーを設置し、同じ地図データを何度も繰り返し撮影しながら、追加報酬を得ることができてしまう。 もしDePINプロジェクトがすべての貢献者を平等に扱うなら、つまりどこでも報酬を与えるなら、どこでもクリティカルマスを達成することはできないだろう。生産性をプロトコルの命題にする必要がある。有用でない貢献に対する基本報酬を確立し、品質にこだわり、重複した作業や低品質なデータを徹底的に拒否しなければならない。 ユーティリティトークンを使ってインセンティブを調整することは、DePINの持つ強力な力だ。しかし、プロジェクトが静的報酬の罠に陥った場合、貢献者は長期的にプロダクトを良いものにするためのインセンティブをほとんど得られなくなる。永続的な力を、短期的な成長と引き換えに手放してはならない。