養殖ノリの「色落ち」発生受け工場排水の規制緩和へ…山口県、「海の栄養分」窒素やリンを対象外に
養殖ノリが黒く色付かない「色落ち」の発生を受け、山口県は来年度にも本格的に工場排水の規制緩和に乗り出す。色落ちは海の栄養不足が一因とみられることから、排水に含まれる窒素やリンなどの養分を海に注ぐ。県単位の水質管理を認めた改正瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)に基づき同様の計画を立てるのは、兵庫、香川両県に続いて3例目という。(小林隼) 【写真】養殖ノリの状態をチェックする商社の担当者ら
高度成長期に汚染が進んだ瀬戸内海の水質改善に向け、国は瀬戸内法を1973年に制定し、瀬戸内海周辺の13府県に厳しい排水制限を課した。半世紀に及ぶ規制の結果、頻発していた赤潮の発生件数は大幅に減少し、県内の瀬戸内海でも71年の52件をピークに近年は1桁台で推移している。
規制は一定の効果を上げた反面、ノリの色落ちなど別の問題を引き起こした。県内有数の養殖場だった宇部市沖では、89年に1億8062万枚の生産量を誇ったものの昨年はわずか62万枚にとどまっている。必要な栄養分の供給を妨げているとして、国は2021年の改正瀬戸内法で排水制限の緩和にかじを切った。
県の計画では、ノリ養殖が営まれている宇部市沖の一部を対象海域に設定。下水処理を担う浄化センターと民間工場の市内3施設に限り窒素とリンの排出規制の対象から外し、再利用に回していた工場排水の放出や汚水の処理工程を省略して海に流すことを認める。
実施期間はノリの漁期を考慮して10月~翌年4月を念頭に置く。海中の窒素は、業界内の環境基準などを参考に1リットルあたり0・2~0・6ミリ・グラム、リンは同0・02~0・05ミリ・グラムの範囲にそれぞれ収まるよう継続的に監視する。
現在、年度内の計画策定を目指して環境省と詰めの協議を進めている。県環境政策課の担当者は「水質保全と漁業振興の両立を図ることが必要。ノリの生育に与える効果を確認しながら柔軟な排水管理に取り組みたい」と話す。