セーヌ川の“汚染問題”は今も未解決のまま…パラリンピックでの競技実施に懸念の声尽きず「リスクは限りなくグレーだ」
今夏に開催されたパリ五輪において、物議を醸し続けたのは、セーヌ川での水泳競技開催だ。フランス政府が総額14億ユーロ(約2400億円)という莫大な予算をつぎ込んで水質改善を図り、いわば大会の“象徴”でもあった舞台での競技実施は議論百出の事態となった。 【画像】エアコンなしの質素なデザイン? パリ五輪選手村の全容をチェック とにかくアスリートの安全面に対する不安が尽きなかった。 大会前から水質汚染に対する懸念が指摘されていたセーヌ川。そうした中で、大会序盤に続いた雨天により汚水と雨水が入り混じった影響で、各競技の公式練習が中止に。それでも大会組織委員会は半ば強行的にトライアスロンの男女個人、混合リレー、オープンウォーター(10キロレース)を実施。参戦選手に体調不良を訴える者が相次ぎ、アスリートへの配慮に欠けた印象は否めなかった。 大会後には米五輪委員会の医療最高責任者であるジョナサン・フィノフ博士が「セーヌ川で実施されたトライアスロンの男女個人、混合リレー、マラソンスイミング男女に出場した全選手の約10%が胃腸炎を発症した」という衝撃データを発表。いまだセーヌ川での競泳実施に対する不安が拭いきれない状況は続いている。 現地時間8月28日に開幕したパラリンピックでもセーヌ川でのトライアスロンは実施予定となっている。現地時間9月1日から障害別に合計11種目(女子5種目、男子6種目)、総勢120人のアスリートが参加予定だ。 競技開始が刻一刻と迫る中で、セーヌ川での競技を経験した者たちからは懸念の声がふたたび強まっている。 米メディア『Outside』は、パリ五輪のトライアスロン混合リレーで銀メダルに輝いた米代表のモーガン・ピアソンが「参加者全員の気持ちを代弁することはできないけど、レースに出場できるかどうかは運次第という感じだった」と語ったことを紹介。 その上で「パラリンピアンが汚染された川の水を無意識に口にした場合には、オリンピック選手たちと同様に無事でいられるとは限らない。水質が良くなる希望がないわけではないが、選手たちはリスクの部分で、限りなくグレーゾーンの局面に陥る可能性がある」と断じた。