神はサイコロを振らない、“今この瞬間”にすべてを注ぐ ホールツアー『心海パラドックス』最終公演
ドラマ『ラストマンー全盲の捜査官ー』挿入歌「修羅の巷」披露も
「神サイは本当に運がいいというか、周囲の人たちに恵まれていて。音楽だけでは絶対にこの景色まで辿り着けなかったと思います。メンバーはもちろん、スタッフの皆さん、そして何よりファンの皆さんのおかげです。ありがとうございます」と、感謝の言葉を述べる柳田。「あとどのくらい、この景色をこのメンバーと一緒に見ることができるのだろう。実際、人の命だってバンドの命だって永遠ではないし、いつかはなくなってしまう。だからこそ、この瞬間を大切にしたい、自分が生きているあいだは守り抜きたいって思うんです」。自らの死生観についてそう話し、再び4人編成に戻って「夜間飛行」を披露。〈無限じゃないから儚くて/終わりがあるから大切で/煌く今がある〉と歌われるこの曲は、まさにそんな柳田の死生観を反映したものだ。 さらに「タイムファクター」「Division」と疾走感たっぷりの楽曲でラストスパートをかけ、本編最後は「修羅の巷」をヘヴィに演奏。アンコールでは「告白」をバンドアレンジで披露したあと、「最後くらい、笑って帰ろうぜ!」とオーディエンスに呼びかけ「キラキラ」を演奏してこの日の幕を下ろした。 前作アルバム『事象の地平線』を、絶望の果てに一筋の光を見出すような楽曲「僕だけが失敗作みたいで」で締めくくり、そのツアーファイナルで「どうか生きていてください」とファンに向かって声を振り絞っていた柳田。あれから1年が経ち、今作『心海』の最後を飾る「告白」では〈どうせいつかいなくなるけど/もらった分だけ返せたらなって思うよ〉と、今ある“生”を精一杯生き抜く覚悟を表明してみせた。この日の4人はそれを証明するかのように、感傷的なムードを極力避け“今この瞬間”にすべてを注ぐパフォーマンスを見せつけていたように思う。この1年間で、さらにたくましく成長した神サイ。来年3月から始まる全国ライブハウスツアー、そして6月に控えるZeppツアーも楽しみだ。
黒田隆憲