《女性の心と体を救う「性差医療」》「性差」は長らく置き去りに 薬を必要としない女性に「検査値」だけで処方されることも
自分の主治医は自分 女性外来のこれから
日本に性差医療が紹介されてから25年が過ぎた今年10月1日、日本版ORWHともいえる「女性の健康総合センター」が、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター内に開設された。初代センター長には産婦人科医の小宮ひろみさんが就任。前職の福島県立医科大学でも「性差医療センター」を率いてきた実績を持ち、日本人女性の性とジェンダー格差に踏み込んだ性差医療の基盤づくりが期待される。 昨今の医療費抑制の煽りを受け、女性外来が閉鎖、縮小を余儀なくされるなか、旧態依然とした男性目線の医療に見切りを付け、女性外来を守る施設に移籍、あるいは自身で開業する医師も増えてきた。 性差医療の守備範囲も内科的な不調だけではなく、膀胱や直腸、子宮などを支える「骨盤底筋」のゆるみで生じる子宮脱などの骨盤臓器脱に対するロボット手術(2020年に保険適用)や、女性に特化したメンタルヘルスなどへと大きく広がっている。 80才を超えたいまも現役医師として診療を続ける天野さんのもとには多くの患者が訪れる。 「初診では予約時に一般的な問診票に加え、A4サイズの用紙に診療までの経緯を記載してもらうのですが、最高記録で24枚書いてきたかたがいました。とても丁寧で非常に助かりました」 性差医療の根本にあるのは、「一人ひとりの体に合った医療を提供する」という医の基本だ。いまの心身の不調や服薬状況だけではなく、自身の持病や家族歴などの詳細を医師に伝えることが、医療の個人差を埋める第一歩となる。 「病気の適正な診断は『問診7割、診察2割、検査1割』というように患者さんの話が要です。『自分の主治医は自分』という気持ちで、子供の発熱や食欲に気を配るように自分自身を観察してください」 男性基準の医療が「取るに足らないこと」として、女性の病気を覆い隠してきた罪は大きい。しかし一方で、女性は家族の健康を優先するあまり、自身の体が発するSOSをキャッチすることが苦手で、病気の発見が遅れるケースも多い。 性差医療や女性外来を日本に定着させるには、医療を利用する女性の意識も変える必要があるのだろう。 あなたのその不調は、決して「取るに足らない小さなこと」ではないのだ。 では不調を感じたとき、どのように病院を選べばよいか。次回は、「性差医療の名医」の見つけ方を紹介する。 ※女性セブン2024年11月21日号
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