『遠い空の向こうに』ロケット打ち上げに情熱を注ぐ、青春映画の佳作(前編)
タイトルの問題
非常に残念なのが、この映画のタイトルだ。撮影中は、原作のままの『Rocket Boys』で公開される予定だった。しかし米ユニバーサル・ピクチャーズは、過去のデータから題名に「ロケット」という単語の入った作品(*1)は、女性観客の集客率が低いという理由で却下する。 そこで考えられたのが『October Sky』というタイトルだった。October Sky(10月の空)というのは、ホーマーがロケット開発を決意するきっかけとなった、スプートニク1号を目撃した月を意味していると同時に、『Rocket Boys』のアナグラムになっている。なかなか考えられた工夫と言えよう。しかし邦題の『遠い空の向こうに』からは、センスが感じられない。まだミュージカル版の『October Sky -遠い空の向こうに-』の方が許せる。 どうも日本の映画配給会社は、宇宙関連作品の邦題を苦手としている節がある。例えば『ドリーム』(16)の原題は、『Hidden Figures』(隠された数字)だ。Figuresには「人物」や「計算する」という意味もあり、「人間コンピューター」とも呼ばれた初期宇宙開発における計算手(https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F-%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%9F%E3%81%A1-%E3%83%8A%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2-%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%88/dp/4805209232/)の活躍が、黒人女性だったという理由で最近まで隠蔽されていた、悲しい歴史を意味している。しかし『ドリーム』というタイトルでは、何も伝わってこない。(*2) *1 ちなみに本作を監督したジョー・ジョンストンは、『ロケッティア』(91)という作品も手掛けている。 *2 内容が伝わらないという意味では、『オデッセイ』(15)も同様だろう。原題の『The Martian』(火星の人)ではなぜいけないのか、非常に疑問である。