かつての“独特の雰囲気”を強く感じられる、フルリメイクされた『サイレントヒル2』最新テクノロジーで蘇る心理的恐怖
にもかかわらず、なぜリメイク版ではそれを強調したのか。理由のひとつとして考えられるのは、本作を2001年のゲームであることを示すため、あるいは原作らしさを出すためである。 ■2001年の空気が詰まっている 初代『バイオハザード』が発売されたのは1996年のことである。この作品はブームになり、3Dグラフィックを活用したホラーゲームが日本でも多くの人に認知され、さまざまな方向が模索される。 フォロワーである『サイレントヒル』シリーズは精神的な恐怖にフォーカスした。ジェイムスは妻を失っており、ほかの登場人物も不安や恐怖を抱えており、それがサイレントヒルという世界に反映されてしまうのである。
とはいえ、あくまで『バイオハザード』フォロワーなわけである。謎解きやバトルがなければ、当時あまり注目されなかった可能性があるだろう。 何より、このころからすでにウォーキングシミュレーターの芽生えはあったが、そういう言葉があったわけでもないし、何よりジャンルとして確立していたわけでもなかった。ゆえにリメイクでその文脈を汲み取ったのだろう。 また、『サイレントヒル2』の心理的な苦しみの描写からも2001年という時代を感じられる。
現代は精神疾患がミーム化、つまり流行りのものとして消費される時代になっており、一部の層からある種のおしゃれさ・かわいらしさとして捉えられている節がある。そして、その態度はゲームにすらなっている。 もちろん、精神疾患をまじめに取り扱ったゲームもあるし、その描き方も多様化している。心の病に対する考えも今と昔ではいろいろな意味で大きく変化しているし、ゲームによるアプローチもいろいろと変わったわけだ。 『サイレントヒル2』では、霧に囲まれた重く苦しい田舎町で、冴えない人たちが自分の精神に悩まされている。ある者は親に関する悩みを抱え、またある者は自分の立場や容姿を受け入れられない。
その精神を詳細に描くことはしないが、雰囲気でそれを感じさせるのだ。彼・彼女らが語る言葉から全貌が明らかになることはないが、苦しみを抱えていることはよくわかる。リメイク版はキャラクターの表情も秀逸で、各人が抱える苦痛がまさしく顔に表れているかのようである。 『サイレントヒル2』で重要なものは何かといえば、その雰囲気であろう。リメイクで現代風にはなったものの、当時の空気をきちんと拾えているようだ。まさしく、2001年のサイコロジカルホラーを蘇らせた一作といえる。
渡邉 卓也 :ゲームライター