米商業用不動産「借り換えの壁」、エクイティー消失の集合住宅が焦点
(ブルームバーグ): オフィスや集合住宅、他の商業用不動産(CRE)のオーナーは、来年末までに1兆5000億ドル(約219兆6000億円)相当の債務が返済期限を迎えるが、約4分の1は借り換えが難しい恐れがある。ジョーンズラングラサールが指摘した。
不動産オーナーの資金調達コストが金利上昇で増大し、物件の価値は幅広く目減りした。バリュエーション低下で同程度の借り入れが困難になった不動産オーナーの多くは、新たな借り入れ確保や既存ファシリティー(与信枠)の拡張のため資本調達を余儀なくされた。
ジョーンズラングラサールによると、返済期限が迫る物件の約40%を占める集合住宅が「借り換えの波」の中心にある。「マルチファミリー」資産を所有する米国オーナーの多くは、低金利時代に期間3年の変動金利ローンを利用し物件を購入した。その後の金利上昇が家賃収入の多くを食いつぶす格好となり、追加のエクイティー確保も厳しい状況だ。
MSCIリアルアセッツの集計データによると、保険料上昇と物件価値の低下も痛みを増大させ、米国の不動産約950億ドル相当がディストレス状態か、そうなる危険がある。
タコニック・キャピタル・アドバイザーズで商業用不動産ローン担保証券(CMBS)トレーディング責任者を務めるケイティ・マッキー氏は「集合住宅の大部分が、現時点でアンダーウオーター(物件価値が融資の元金残高を下回る)状態にある。エクイティーの多くが消失したとはいえ、長期的にはかなり回復力のある資産クラスであり、資本投入が必要なだけだ」と見解を示した。
商業用不動産向けの多くの変動金利ローンが、800億ドル相当のローン担保証券 (CLO)として証券化され、投資家に販売されており、近づく返済期限の到来は、ウォール街にとっても頭痛の種になりかねない。とはいえ、CRE市場の問題を金融機関のシステミックイシューと投資家は捉えていない。
CRE・CLOの貸し手は、金利が低下し、追加エクイティーが注入されるか、メザニンローンのような劣後ローンが確保できるまでの間、借り手の資金繰りが行き詰まらないようローンの条件を修正している。