昭和100年へ キン肉マン原作担当・嶋田隆司氏、大見え切って「友情パワー!」と言えるのは昔からやり続けている僕らの特権 時がたつにつれて変わっていくところもあるけど絶対に変わらない芯も必ずある
嶋田「今と全く違うのは、選択肢が限られていましたよね。メディアはテレビが絶対的な王者で、野球やプロレスといった話題のジャンル、アニメやバラエティーの人気番組、みんなが同じものを見ていました。そんな時代にテレビに迫るほど特に子供人気の高い娯楽として、僕らの夢中になった漫画がありました。やがて読むだけでは飽き足らず、自分たちでもオリジナルの話を考えて描くようになって。その中でみんなに一番面白いって言われるような漫画を描けたら最高やな…って」
――それが漫画家ゆでたまご先生の原点?
嶋田「はい。それで当時から一番売れていた『少年ジャンプ』に狙いを絞って、どんどん作品を応募して。念願かなって新人漫画賞の赤塚賞準入選をいただき、プロデビューできました」
――昭和と今でコンテンツとしての漫画の立ち位置の違いは感じられますか?
嶋田「ジャンルとしての地位は相当に向上しましたね。僕らが始めた当時は、まだ漫画は子供の読み物という印象が強くて、世間一般的には親も子供に『漫画なんか読まんと勉強せえ!!』なんてよく言っていましたけど、今では漢字の勉強に子供に漫画を読ませる親も多いと聞きます。それに同じ漫画の中でも後に分野がどんどん細分化されて、専門知識に特化した医療漫画や金融漫画なんかも出てきて、読むとむしろ非常に勉強になりますからね」
――ゆでたまご先生は昭和から平成、令和とずっとプロとして漫画を描き続けてこられていますが、時代によって描き方が変わってきたというようなことは?
嶋田「いや、でも僕らはそう変わらないですね(笑)。僕らの『キン肉マン』が何の漫画かって言われたら格闘漫画ですけどギャグ漫画の要素もあって、明確に絞れない。ごった煮みたいな感じですよ。それで僕らのファンの人に何を求めてくれているのか聞いてみたら、ゆでたまごの描く世界観が好きって言ってくれる人が結構多くて…じゃあもうヘンに変えずに考えすぎずに、自分らの描けるものを描いていくしかないなと。今となってはむしろあまり変えない方がいいとすら思っています。例えば僕ら〝友情〟というのを作品テーマの柱に据えてやっていますけど、今の新しい漫画家さんがそんなド直球の青臭い単語を押し出してやっていくのは、少し気恥ずかしいだろうとも思うんですね。でも僕らはずっとそれでやってきたし、『友情パワー!!』って大見え切って真正面から恥ずかしげもなく言えるのは、もう昔からやり続けている者の特権かなと半分思ってやっているところもあります」