【箱根駅伝】実業団の監督辞任・単身赴任してでも…「人生すべて」かける神奈川大・中野剛新監督 エース棄権も「しぶとく」つかんだ箱根の切符
今年度から神奈川大学の駅伝新監督を務める中野剛新監督。「僕にとってはすべて」だと語る箱根駅伝に戻り、目指すのは「しぶとく粘れるチーム」です。 【画像】第101回箱根駅伝の神奈川大学チームエントリー
■「家族と離れ離れになってでも」 戻ってきた箱根路
2024年1月18日。神奈川大学の駅伝監督交代記者会見で、中野監督が就任挨拶を行いました。中野監督は陸上競技部OB。チームを初の箱根駅伝優勝に導いた前任監督・大後栄治さんから指導を受け、第69回大会からは3年連続で箱根路を走りました。 1995年に大学を卒業した後も佐川急便(現SGホールディングス)で選手として活躍すると、2008年から2021年の13年間は、長きにわたって監督を務めていました。 21年からは母校・神奈川大学に戻り、駅伝チームのコーチに就いた中野監督。箱根駅伝とは「実業団の監督辞めてまで、単身赴任してまで、家族と離れ離れになってでも、この年になってまで魅力ある世界」と熱を込めて語り、「今となっては人生すべてになっちゃった。箱根駅伝にかけるしかないくらい僕にとってはすべてです」と笑みをこぼしました。
■しぶとく粘れるチームへ
夢の世界に舞い戻った中野監督が目指すのは「ギリギリのところで粘れる、しぶといレースができるチーム」です。 前回大会では21位と振るわなかった神奈川大学。そこで中野監督は10月の予選会に向け、選手を例年よりも多くのレースや記録会に参加させ、場数を踏ませることを徹底しました。結果的にこの取り組みが大当たり。実業団や他校の選手との真剣勝負の機会が増え、「負けたくない」という思いが自然と促されるためか、自己ベストを更新する選手が続出したのです。 選手もチームの成長に手応えを感じている様子。エースの宮本陽叶選手(3年)は「自己ベスト28分台で走る選手がいっぱい出て、本当に流れがいいと思います」と笑顔を見せました。
■アクシデント続きの予選会 エース棄権も「しぶとく」つかんだ箱根の切符
迎えた予選会は、過去最悪と言われる暑いコンディション。10月ながらスタート直前の気温は、午前9時の時点で23.2度。強い日差しも照りつける過酷な条件の中、神奈川大学をさらなるアクシデントが襲います。 各校12人がハーフマラソン(21.0975km)を走り、チーム上位10人の合計タイムで競う予選会では、10位までが本大会の出場権を獲得。しかしレース後半の15km地点で、神奈川大学は圏外の11位と苦戦。厳しい状況の中、中野監督はさらに衝撃的な連絡を受けます。 エースの宮本選手が、脱水症状により途中棄権。中野監督は「宮本棄権したって。運ばれたって。これはアカン」と、驚きを隠せない様子でつぶやきます。それでも目の前を走る選手に、ジェスチャーを交えながら「11位! 11位!」と叫び、熱い声援を送りました。 そして結果発表の時。祈るような選手たちの顔は「第9位、神奈川大学」という声を聞いた瞬間、晴れやかな表情へ。監督の掲げた「ギリギリのところで粘れる、しぶといレースができるチーム」と体現してみせました。 監督の目には涙。 「私もいくつか経験したレースがあるんですけど、その中でも本当に大変厳しいもので。秒差かもしれないけど、乗り越えてくれたことに学生に感謝しかないですよ、本当に...」
本大会に向けては「いいのかどうか分からないけど、僕自身は楽しみたい。順位関係なくめいっぱいいってくれたら、それでいいと思っています」とにこやかに語ります。中野監督のもと、しぶとく粘れるチームへと変化した神奈川大学。本大会でもその粘り強い走りで、プラウドブルーのタスキをつないでくれるに違いありません。