正確な診断の精度は約90% 医師の片腕となり得る、病理学に特化した新しいLLM「PathChat」
今、世界の病理学医から注目を集めているのが、病理医の診断支援ツール「PathChat」だ。PathChatは、腫瘍やその他の重篤疾患の同定、評価、診断において、病理医をサポートし、より正確な診断や治療判定、予後を予測するのに役立つ。 特筆すべき点は、従来の主要なAIモデルと比較して、診断に関する多肢選択問題や臨床的に関連のある質問に対する回答において非常に精度が高いことだ。情報が画像のみの場合で78%、臨床コンテキストを含む場合で89.5%という正確さを誇る。 病理医や研究者と共に、診断、治療を含む臨床方針決定を行うAIコパイロットが、PathChatによって一歩前進すると期待されている。
病理医がPathChatとチームを組めば、より適切な治療が提供可能に
特定のタスクを行う予測モデルやタスクに依存せず、自己監督学習を行う視覚エンコーダの開発において、計算病理学は目覚ましい進歩を遂げてきた。 それと同時に現在、生成AIの爆発的な成長ぶりは目を見張るものがある。AIアシスタントは画像、ビデオ、音声に基づいて、把握・理解し、論理的に考え、判断するという機能を備え、ますますマルチモーダルになってきている。その一方で、病理診療を念頭に置いた、汎用性を備えたマルチモーダルAIアシスタントの開発は非常に限られている。病理画像を正確に認識する能力が十分ではないのだ。 そこに誕生したのが、PathChatだ。開発した、ハーバード大学医学部及びブリガム・アンド・ウィメンズ病院の病理学助教授、ファイサル・マハムード氏が率いるマハムード研究室は、「AI for Pathology(病理学にAIを)」という標語を掲げる。同研究室は、機械学習、データフュージョン、医用画像解析を活用して、がん診断、予後予測、バイオマーカー探索のための合理的なワークフローを開発することを目標としている。 マハムード氏は2019年、米国の首都ワシントンで開催された、GPUテクノロジー・カンファレンスで、PathChatの研究について講演した。病理医の診断にばらつきがあること、つまり不確定なままで判断を下されるために、より多くの生検や必要のない介入治療が行われることがあり、その結果、患者に悲劇的な結果をもたらす可能性がある、と同氏は警告している。 それに対し、ディープラーニングは主観的なバイアスを減らし、診断と治療反応予測を助ける可能性を秘めていると同氏は話す。マハムード氏は、病理医がPathChatとチームを組み、治療や診断にあたることで、より適切な治療を患者に提供できるようになると考えている。