日本上陸60周年の「グッチ」、世界巡回展の見どころは? 美術館の所蔵作品とのコラボが斬新
◆日本の伝統工芸が新たな息吹を吹き込む「BAMBOO - バンブーの世界」
次の展示室では、馬のサドルの輪郭を模した曲線を描くシルエットが特徴的な、グッチの最も象徴的アイコンである〔グッチ バンブー 1947〕をフィーチャー。まず目を引くのが、月明かりの夜、竹林に風がそよぐ映像に、光るように浮かび上がるコレクションたち。まるで「かぐや姫」の世界を思わせるよう。 自然竹を用いたバンブーバッグと竹林が相まって、日本人にとってはどこか懐かしく、外国人にとっては日本との親和性を感じさせるような幻想的な空間でした。 対面する展示台では、ヴィンテージの〔グッチ バンブー 1947〕バッグに、日本の伝統工芸作家とコンテンポラリーアーティストが新たに命を吹き込んだ作品の一部を展示。 職人が上質な竹に熱を加え手作業で半円形に加工する、バンブーハンドルの作品群が並ぶ中、ハンドルとフックの部分が陶器製となる陶芸家・中里博恒(なかざとひろつね)氏とのコラボ作品(写真下)は、幽玄で特に目を引きました。 これらの作品の背後には、京都市京セラ美術館のコレクション、井上流光(いのうえりゅうこう)の屏風作品《籔(やぶ)》(1940年)が配され、日本との絆をより明確に伝えてくれます。
◆日本の赤い糸伝承に思いを込めた「RED THREADS - グッチの絆」
日本の「赤い糸」からインスピレーションを得たこちらの展示室は、空間全体が深みのあるレッドで彩られており、この色は本展のメインビジュアルにも使用されています。 これが現クリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノが提唱する新たなシグネチャーカラー「グッチ ロッソ アンコーラ」であり、これからのグッチのビジョンを表しています。 この空間には長い歴史の中で培われてきた、ウエア、バッグ、アクセサリーといった多種多様なレッドアイテムが整然と展示され、それぞれのもつブランドの伝統を物語るエレメントが「赤い糸」のように結ばれていることに気付けるはず。 1999年秋冬コレクションのパテントレザー ジャケット、〔グッチ ホースビット 1955〕バッグと同じハードウエア(金属)を飾ったアーカイブバッグなどは必見。レッドの作品たちを通して、時代を越えて連綿と受け継がれるクラフツマンシップやエレガントさを再確認でき、グッチの自由な精神や未来への揺るぎない挑戦が感じられるはず。 ブランド創設の地・フィレンツェと50年以上にわたり姉妹都市である京都。本展を企画した英国のコンテンポラリー・アーティスト、エス・デブリンいわく、昨年、京都市京セラ美術館の回廊を歩いた際、フィレンツェとを結ぶ赤い糸を感じたそう。 また所蔵作品もグッチのクリエイションとの共鳴を感じ、バンブーハンドルにも日本とのつながりを感じたのだと言います。本展を鑑賞してその思いが理解できました。 歴史と伝統に裏打ちされた世界的ラグジュアリーブランドでありながら、展示室では自由にスチール・動画撮影ができる「GUCCI COSMOS」。観る者全てを受け容れる懐の深さを感じました。 京都を訪れる外国人観光客も多く来場していましたが、日本の芸術×GUCCIのコラボレーションが互いを昇華させ、国内外の鑑賞者を強く惹きつける、大変価値のある企画展でした。 グッチ日本上陸60周年記念展「GUCCI COSMOS」 ・会場:京都市京セラ美術館 本館 北回廊1階、新館 東山キューブ (京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124) ・開催期間:2024年10月1日(火)~12月1日(日) ・開館時間:10:00~18:00(最終入場は17:00 まで) ・休館日:月曜(祝日の場合は開館) ・観覧料: 一般2200円、大学生1500円、高校生1000円、中学生以下は無料 ※予約優先制。美術館ウェブサイトより事前の来館予約(日時指定)
塩田 典子(一人旅ガイド)