<ウクライナ危機>政府軍と親ロシア派の停戦はこのまま続くのか?
停戦はこのまま続くのか?
親ロ派、ウクライナ政府側、双方とも内部に、右翼過激派という跳ね上がり分子を抱えています。ウクライナでは10月26日に総選挙があり、功名を狙って、あるいはポロシェンコを窮状に追い込むために親ロ派を攻撃する動きが出て来るかもしれません。また16日にはウクライナ議会が東ウクライナの一部に特別な法的地位を与える法律を採択、20日にはウクライナ政府と親ロ派がOSCEの仲介で合意した停戦の条件(30キロの幅の緩衝地帯の設置、OSCEの停戦監視団の配備、外国兵力・傭兵等のウクライナからの撤退等)が発表されましたが、これらは総体としてロシア側にかなり不利なものとなっています。 例えば16日議会が採択した法律は老獪なもので、親ロ派が樹立した「政府」は無視し、キエフの中央政府が地元の市町村レベルを直接統治することを可能にしたものなのです。ロシア側が要求した、東ウクライナに「法的に特別な地位」を与えることは、ウクライナ政府によって見事に換骨奪胎されてしまったのです。東ウクライナ全体を軍事制圧することなしに、ここをNATOとの間の中立地帯にしようとするロシアの目論見は、実現困難となってきました。9月12日には米・EUが対ロ制裁措置を強化し、21日にはモスクワで東ウクライナへの介入に反対する大規模なデモが起きるなど、全般の情勢もロシア政権にとって不利なものになりつつあります。 これまでのようにウクライナ自身にロシアとEUの間でのバランスを取らせておけば良かったものを、「西側がウクライナを取ろうとしている」と思い込んでクリミア、東ウクライナで動いたことが、プーチン政権にとって重石になってきました。ロシアの将来自体が問題として浮上してきたと言えるでしょう。 (河東哲夫/Japan and World Trends代表)