<ウクライナ危機>政府軍と親ロシア派の停戦はこのまま続くのか?
ウクライナ政府軍と親ロシア派が今月5日に合意した停戦が続いています。政府軍はウクライナ東部で重火器を撤収する準備を始めたとも報じられていますが、停戦はこのまま続くのでしょうか。 【地図】ウクライナとその周辺国の地図
なぜ停戦合意がなされたか?
ウクライナでは7月まで政府軍の攻勢が目立ち、東ウクライナの親ロ勢力は追い詰められていました。ところが8月に入って親ロ派の作戦担当者(「ドネツ人民共和国」のストレリコフ「国防相」等)が更迭されたことで、状況は一変したのです。親ロ勢力はドネツク、ルガンスクの2つの中心に分かれているだけでなく、ロシアからの諜報要員、義勇兵、右翼青年、ウクライナ地元の青年等の寄せ集めです。ストレリコフ達はこれら兵力を統合運用できるだけの人脈と経験を持っていなかったのに対して、後任のコノノフ「国防相」はこれまでのゲリラ戦法から、兵力を結集した正規戦法への転換を実現したのです。 その結果8月下旬東ウクライナに展開していた政府軍は包囲され、2個戦車大隊が捕獲されるとともに、兵士は逃散してしまいました。もともと弱体と見られていたウクライナ政府軍は、しばらく立ち直れないだけの打撃を受け、ポロシェンコ大統領もプーチン大統領の停戦呼びかけに応じざるを得なくなりました。プーチンの方は東ウクライナでの拠点は一応確保できたので、9月5日のNATO首脳会議が強硬な反ロシア措置を打ち出すのを防ぐことを狙ったのでしょう。
双方の思惑は?
プーチンは東ウクライナの併合は望んでいないと見られています。経済的負担が大きすぎること、現地住民でロシアとの併合を望む者は少数派であること、そして西側の反発が大きなものになるだろうことが、その理由でしょう。プーチンが望んでいるのは、ウクライナがNATO、EUに近づくのであれば、ロシアとの国境に接する東ウクライナを非武装・中立地帯にするなどして、NATO軍と直接対峙するリスクを避けること、東ウクライナに強い自治権を与えてロシアとの関税同盟に入らせること、この二つであると思われます。その目的を実現するのは容易でなく、少なくともこれまで獲得したドネツ・ルガンスク両州(の一部)は確保し続けないと、交渉する立場が弱くなります。 ポロシェンコ大統領の方は、西側の支持をつなぎとめながら停戦を続けて、経済力・軍事力の回復をはかり(ウクライナにはソ連時代からの兵器が潤沢にある他、ソ連時代からの強力な軍需産業が残っています)、折を見て東ウクライナからの親ロ派掃討作戦を開始することでしょう。