【水口予報士が解説】「松山でここまで降るとは想定外だった…」ベテラン予報官の葛藤と“記録的大雨”から得る教訓
下水道の整備基準上回る雨
松山市の下水道整備課によると、松山市内の下水道の整備基準は10年に1度レベルの雨の1時間40.5ミリ。下水道が排水能力を超える大雨となると、排水が追い付かず下水管から水が溢れ出す「内水氾濫」が起こる。また川を流れる水が溢れると「外水氾濫」となる。 整備基準の2倍近い雨が降った松山では、床上浸水132棟、床下浸水389棟(16日時点)。冠水した道路をゆっくりと走る車や、通行止めを迂回して渋滞も発生した。
想定外の雨「いつもと違う」と感じたら
土木工学が専門でインフラに詳しい愛媛大学の森特定教授によると、想定外の雨に「ん?いつもと違う」と感じ、自分から情報(公的なもの)を取りに行くことが大切だという。 気象庁のHPをスマホに入れておけば、雨雲レーダーや、土砂災害や浸水、洪水などの危険度をあらわす「キキクル」をいつでも誰でも無料で見ることができる。 今回、幸いにも大規模な土砂災害は発生しなかったが、土砂災害の危険度を表すキキクルは、1時間ほどで松山市全域が黄色(注意)から紫(危険)に変わり、土砂災害警戒情報も発表された。 森特定教授によると、この日、土砂災害のおそれがある危険な崖の近くに住む人がどんな行動をとっていたかが重要になるという。
大切なのは振り返り反省すること
「今回誰しも災害にあう寸前までいっていたような雨だった。被害に遭わなかった人はたまたまで、そういう未災害の状況をリスクという」 森特定教授は、大雨のあとの周囲の状況や自らの行動を振り返ることでリスクを知ることが大切だという。例えば、普段はきれいな道に小石や泥、落ち葉が残っている所は大雨の際に水が集まってきた証拠。周囲より土地が低く、浸水や冠水に注意が必要となるため、予め普段から対策を取ることができる。 「自分の所にリスクがあるのかどうかを知る事がまずは大事。気象の激甚化というのは言われ始めて10年になるし、治まることはなくこれから激化の方向をたどっていくことを考えると、自分で守れるものは自分で守るのが大事になってくる」 想定外の大雨から1か月。改めて自助について考えておきたい。(気象予報士 水口佳美)