1本12,100円の苗木を2年間育てることで、土砂災害防止に自然体で貢献.......オフィスや個人宅で全国約3000本が育つ“戻り苗” 新しい林業との接点を生み出すソマノベース奥川季花さんに話を聞いてみた
ルーツは実際の体験から、土砂災害による人的被害をゼロにする
奥川さん「私が“何故、ソマノベースを創業したのか”ということに関わってきます。和歌山県・那智勝浦町で高校生の時に、紀伊半島大水害という大きな台風災害に被災し、その時に友人がなくなってしまう経験をしました。 その際に土砂災害が起きにくい山を作っていきたいと思い、防災や土砂災害に取り組むNPOで働いたのですが、その中で感じたのは“災害とか山とか、そういう情報にほとんどの人が無関心”ということでした。 戻り苗を育ててもらうことで、2年間私たちから防災に関しての情報を伝える機会を作っていけることや、すごい長い時間一緒にいるからこそ木のことを大事に思える、さらに好きになれるといった状況に至りやすいのではないかと思い、戻り苗を作りました」 トムさん「戻り苗が2年間、災害情報への関心を寄せるための媒介(メディア)みたいな役割をしてくれているんですね。苗木・林業・土砂災害この3つの関係性をもう少し詳しく教えてもらうことはできますか?」 奥川さん「日本全国の90%ぐらいの市町村が、崩れたり土砂災害が起きたりする可能性が ある“土砂災害危険区域”を持っています。そういった山が増える理由の1つとして地質や降雨量が多いなどの要因が考えられます。 一方で木を切った後に再度植林されていない場合や、木が全く切られていないなど、人の手によって管理が出来ていないことで災害のリスクが高くなるという場合もあります。私たちは人が関わることによって影響を受けるリスクを防いでいきたいと思っています」
50年かけた丸太が2000円...!? 山との接点不足の理由とは
林業の現場を知るために実際にご自身も山へ入るという奥川さん。土砂災害に弱い山が人為的な理由で出来てしまう理由の1つを教えてくれました。 奥川さん「林業という仕事は一般的には、木を山から切って売ることです。その木を市場に売った時の値段がすごく安くなってしまっています。今だと50年かけて育てた丸太1本が2000円とかそれくらいにしかならないことがあります。 それだけの値段にしかならないものを、もう一度植林して50年かけて育てるかとなった時に『再投資はしないよ』という方が増えていることが大きな課題だと感じています」 トムさん「たしかに既に生えていた木を2000円ほどで売った後に、再度50年後のために投資するっていうのはビジネス的にも難しいですよね。そういった側面もあり土砂災害に弱い山も増えているということなんですね」 トムさん「そもそも植林用の苗を育てるという戻り苗にはどういった体験からたどり着かれたんでしょうか? 奥川さん「ソマノベースの最初の立ち上げメンバーは、私と同い年ぐらいの世代の子たちです。みんな林業の経験者ではなくて、デザイナーだったり、プログラマーだったり、本当にいろんな業種から来ています。 ある時、デザイナーの子と一緒に林業の現場に行ったところ、林業家さんや苗木業者さんたちが“どんぐりから育てている”というのを見て『これめちゃくちゃ面白くない!!』と盛り上がりました。ちょうど私たちの周りも結婚とか、出産をする子たちが増えてきている時でもあったので“木を植えること”をプレゼントできたら面白いよねとアイデアがはじまりました。 昔の日本では子供が生まれると木を庭に植えるという文化があって、出産祝いにすごくよいかもしれないと思い、企画書をコンテストに出したら、賞をもらってそこからちょっとずつスタートしていきました」
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